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楓雅くん

楓雅(ふうが)くんは宮城県仙台市内の普通小学校に通う小学校 3 年生の男の子です。楓雅くんのFM ストーリーはお母様に書いていただきました。お母様は宮城県難聴児を持つ親の会で、0 歳から小学生までのお子さんのお母さま方を対象に、メーカーや販売店を招き、補聴器やFM システムの説明会や勉強会を企画するなど、こどもたちの成長を第一に考え、活動をしています。

それでは楓雅くんの FM ストーリー、お読みください。

インタビュー時期:2010 年 10 月

楓雅くん。宮城県仙台市在住の小学3年生。学校、自宅で FM システムを使用中。

1. 自己紹介をお願いします。

楓雅はとても明るい性格で面白いこと、楽しいことが大好きな小学校 3 年生です。 通学している小学校では聞こえの教室があり、毎日 1 時間、授業でわからない部分の勉強を頑張っています。テレビだとお笑い番組が大好きで、お友達と漫才してクラスのみんなを笑わせたりしています。

2. 現在使用中の補聴器を教えてください。

両耳ともフォナック社のナイーダⅤ UP を使っています。

3. 現在使用中のFM システムを教えてください。

送信機はインスパイロ アイラペル、受信機は ML10i を両耳で使っています。最初は送信機 Campus SX を使っていたのですが、現在は自宅のテレビに Campus SX を接続したままにして、インスパイロ アイラペルを新たに学校生活用として買い足しました。

送信機

受信機

4. FM システムを使う前、FM システムについてご存知でしたか。

私は宮城県難聴児を持つ親の会の会員なのですが、親の会では年に数回、講演会や勉強会などが開催され、社会人になった難聴の方や先輩のお母さん、各専門の先生などをお招きしています。その講演で FM システムについて話を聞くことがありました。 当時の 75MHz 帯の FM システムは使用できる距離が短かったり、雑音が入りやす かったりと、決して良いことだけではありませんでした。 ただ 2007 年 8 月に電波法が改正され、169MHz 帯の FM システムが認可されたことで是非試聴してみたいと思いました。

5. FM システムを使おうと思ったきっかけを教えてください。

楓雅は聴力レベルが両耳とも 110 dB HL で、難聴のレベルが重いため、使えるものはすべて使って、少しでもカバーできればと思い、使ってみようと思いました。実際に購入する前に試聴して、FM システムの効果を確認しました。

6. FM システムを使うようになって、どんな変化がありましたか。

幼稚園の先生からは「反応が良くなって、自分から行動できるようになった」と言われ、とても嬉しく思いました。通園していた幼稚園は園児数が少ないこともあり、先生の目が行き届いて、楓雅が理解できるまでゆっくりと大きな声で話していただけるなどの配慮がありました。

でも園児数が少ないとはいえ、こどもが数名いた だけでも騒がしい状況と言うことに変わりはありません。 先生から「自分のロッカーから粘土を取ってきてください」と言われると、楓雅はお友達の様子を見て同じように行動し、粘土を取ってくることができました。また お友達や先生がお弁当を出しているのを見て、「お弁当を食べる時間だな」と分かり、自分も同じ準備するなど、常に周りを見て行動していました。それが FM システムを使用することで、お友達と同じ情報が同時に伝わり、周りを見なくても、 自分から行動できるようになったのです。

実は楓雅が幼稚園で一番苦手だったのは紙芝居でした。難聴のこどもの多くは、耳からだけではなく、話をする人の口元を見て、話を理解します。しかし紙芝居は話し手の顔(口元)が見られないだけでなく、声も紙芝居の後ろからですし、さらに周りにこどもがいてざわざわしていると、本当に聞き取りが難しかったのです。そのため FM システムを使ってないときは先生から前もって紙芝居を借りて、ある程度あらすじを教えていました。でも FM システムを使用してからは、お話の内容が理解でき私に紙芝居のあらすじを教えてくれるようになったのですよ。

7. フォナックの FM システムを選ばれた理由を教えてください。

一つお伝えできることは、こどもの負担になったり煩わしさを感じたりすることがなかったと言う点です。例えば補聴器ナイーダを使って、「イージー FM ※1」 機能を利用すれば、こども自身が補聴器のプログラムを切り替える必要はありません(実際、幼稚園児にとってプログラム切り替え作業はとても難しいと思います)。 そのほか、「きちんと聞こえているのか ? ※2」「周りの騒音はどうだろうか ? ※3」ということも送信機インスパイロで確認することができるので、学校の先生にとっても 使いやすいと思います。

学校の授業ではテレビを使用したり、CD で物語を聞いて問題に答えたりするテストがあります。楓雅にとってテレビや CD プレーヤーなどの機器からの音を聞き取ることはとても難しかったのですが、アダプターやケーブルを介して送信機をオーディオ機器につなげることで、直接音声を聞くことができます。 運動会や学習発表会のときもアンプに送信機をつなげることで先生からのアナウンスや音楽も聞くことができるようになりました。FM システムのおかげで、クラスのお友達と同じように授業に臨むことができ、とても助かっています。

※1 : イージー FM
送信機のマイクロホンからの FM 音声を補聴器が感知すると、自動で専用プログラム「FM+M(エフ・エム・プラス・エム)」に切り替わる機能です。FM+M とは送信機からの音声(FM)と補聴器のマイクロホンからの音声(M)が一緒に聞こえるプログラムです。

※2:受信機チェック
インスパイロから受信機の情報を読み込み、FMシステムが正常に作動しているかどうかを確認することができます。

※3:音量チェック
インスパイロは室内の騒音レベルとマイクの音量レベルを確認し、聞き取り環境が良いかどうかをマークでお知らせする機能です。

8. 学校以外のシーンで FM システムを使われていますか?

はい、自宅でも使っているのですが、特にゲームをするときやテレビを見るときに重宝しています。FM システムを使っていないときはどうしても楓雅のためにテレビの音量を大きく設定するので、その間、私は大きな声で話さないといけなかったり電話や来客のときに気になったりすることがありました。マンションやアパートに住んでいる方だったら、なおさらだと 思います。でも送信機はオーディオ機器につなげて使うことができるので、その悩みが解消されました。テレビの種類に依ると思いますが、私たちが使っているテレビはイヤホンとスピーカーの音量を個別に設定することができるので、イヤホンジャックに送信機をつなげ、イヤホンの音量だけ上げておけば、本人にしっかり聞こえます。

9. FM システムを使う上で難しいことはありますか?

両耳で受信機を使用しているので、先生の声はクリアに聞こえるのですが、周りのお友達が発表すると聞き取りにくいことです。ただ小学校 3 年生になれば、状況や環境によって補聴器の機能を活用できるようになるので、ナイーダの「クイックシンク※」機能を利用しています。ナイーダに FM をつ使わないプログラムを設定しておき、お友達と相談するときは、プログラムボタンを押して、対応しています。

※ クイックシンク
片方のプログラム操作やプログラム切り替えで左右の補聴器を同時に変更させることができる機能です。

10. 楓雅くんにとって、FM システムはどんな存在ですか?

● 楓雅くんからのコメントです。

FM システムはアイテムの一つみたいなものかな ? 言葉とか手話とか、補聴器や携帯のメールとか、磁器ボート※などと同じ、僕をパワーアップさせてくれるアイテムだよ!ゲームで例えると、「楓雅くんは FM を手に入れた!レベルが 50 アップした!」 って感じ!

※ 磁気ボード
学校のプールの授業時に、先生に情報を書いてもらっているボード。

11. FM システムの使用を検討されている方にメッセージをお願いします。

迷っているなら是非一度、試聴してみてください。補聴器も人工内耳も、手話も口話も口読も完璧なものではありません。様々なものを試して使ってみて、少しでも手がかりになれば、と思っています。私は障害があるこどもが、障害のために人より頑張る必要はないと思っています。頑張るのは親であり、周りの先生や大人のほんの少しの配慮で、子供を取り巻く環境は、大きく変えることができると思っています。FM システムは、そのための一つの手段だと思います。

FMストーリー(楓雅くん)_No.6.pdf

 

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