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きこいろ × フォナック コラボ企画「知ってください片耳難聴」第1回

フォナックでは、片耳難聴を抱える当事者やご家族だけでなく、その周囲の方々にももっと知ってもらいたいという思いから、このたび片耳難聴の当事者団体である「きこいろ」様とコラボを開始することになりました。

難聴を抱える方にはいろいろな背景や困難があり、困り感も人それぞれですが、その中でも、他人から聞こえの困難をかかえていることがわかりにくいと言われる、片耳難聴を抱える皆さまにスポットを当ててみたいと考えました。

今回、新たにコラボレーションを始めるにあたり、きこいろ代表の岡野由実さんにお話をうかがいました。インタビューの内容を3回に分けてご紹介します。


岡野さんは言語聴覚士として、これまで療育施設や更生相談所、耳鼻咽喉科クリニック、大学障害学生支援室等で臨床の経験を積んだのち、現在、群馬パース大学 リハビリテーション学部言語聴覚学科の講師として教鞭を取られる傍ら、東邦大学医療センター大森病院耳鼻咽喉科などに勤務されています。

2018年の日本小児耳鼻咽喉科学会・学術講演会におけるフォナック共催セミナーでは「一側性難聴児の家族への助言:学童期から青年期を展望して」という演題で、また同年のJAPAN補聴器フォーラム2018におけるフォナック出展者セミナーでも、「一側性難聴への支援を考える」という演題でそれぞれご登壇いただきました。

まずご自身のこととして、難聴になった時期ときっかけについてお聞きしても良いですか

中学2年生のときに突発性難聴になりました。そのとき、耳が聞こえなくなって辛かったって思い出はほとんどなかったのですが、将来は耳鼻科の医者になって難聴を治したい!と漠然と思っていました。

言語聴覚士の仕事について教えてください

結局は医学部には進まず、心理学や障害学を学べる大学に進学しました。入学当時は心理学に興味があったのですが、ちょうど私が入学する一年前に、たまたま障害学の専攻で一側性難聴について卒論を書いた先輩がいらしたことを聞き、その先生の研究室に入ることにしました。

大学に入学した時には「言語聴覚士」という言葉すら知らなかったのですが、その指導教官の先生の研究室の本棚に「言語聴覚士テキスト」が置いてあって、「言語聴覚士ってなんですか?」って聞いたのが、言語聴覚士を知ったきっかけでした。

指導教官が言語聴覚士だったのも、言語聴覚士という仕事を知ったのも本当に偶然でしたが、元々医学に興味があり、大学で学んだ聴覚障害についての知識を活かせる専門職として、言語聴覚士という職業に運命的なものを感じました。それで、大学卒業後は言語聴覚士を目指そうと考えました。

「きこいろ 片耳難聴のコミュニティ」を設立されたきっかけについて教えてください

きっかけは、今きこいろで事務局を担当しているプロジェクトメンバーの一人である麻野さんが、SNSを通じて私にメッセージを送ってくれたことでした。

私自身、片耳難聴の当事者として、大学の卒論から片耳難聴の研究を行っている研究者として、それから言語聴覚士という聞こえの専門職として、片耳難聴についての知識や関心は人よりも多いかなと思っていました。そして自分の知識や経験を発信したいという思いは持っていました。でも、行動力や発信する術がなくて。

麻野さんも、小さい頃から片耳難聴の当事者で、大人になってめまいを併発したことをきっかけに自分の難聴について考えるようになり、「自分のことなのに片耳難聴のことを知らない人ってたくさんいるんじゃないか?」という思いに至り、それから色々調べる中で、私の論文に辿り着き、連絡をくれました。

情報を発信したい私と、行動力と人脈のある麻野さんのニーズがぴったりマッチして、ぜひ一緒にやっていきましょう!ということになりました。

活動内容についておしえてください

私たちの活動の内容としては、3つの大きな柱を立てています。

「片耳難聴についての情報発信」、「当事者同士の交流」、そして「社会への啓発」です。

一つ目の「片耳難聴についての情報発信」ですが、webページやSNSなどのインターネットを通して、片耳難聴の当事者やそのご家族に対して情報の発信を行っています。また、レクチャーの開催やリーフレットの作成なども行っています。

二つ目の「当事者同士の交流」ですが、「片耳難聴Cafe」といって5~6人の小グループで片耳難聴あるあるを語り合おうという交流の場を設けています。現在はオンラインで行っていますが、以前は全国各地で開催していました。他にも、フェイスブック上で会員同士が情報交換を行う場なども提供しています。

そして三つ目の「社会への啓発」は、当事者や関係者以外にも広く片耳難聴について知ってもらうために活動を行っていきたいと考えています。が、前の2つの柱のようには具体的な活動にはなかなか至っていません。

昨年11月には初めての「片耳難聴キャリアセミナー」を開催されたとお聞きしました

私が以前行った研究調査で、「片耳難聴者が最も困るのは社会人になってから」というデータがあり、当事者が最も困る「仕事」と「片耳難聴」をリンクできないかな?と考えました。

それで、初めての試みとして、外部講師を招いてレクチャーをやってみました。

講師には企業人事や学生向けのキャリア支援の経験があるキャリアコンサルタントの方で、同時に片耳難聴者の親の立場である方をお招きしました。

私が印象的だったのは、事前質問で「片耳難聴でもできる仕事は?」「片耳難聴者に向いている仕事って?」というような質問が結構多かったことです。

セミナーでは、「片耳難聴だから」で仕事を選ぶんじゃなくて、「自分が何に興味があるのか」「何がしたいのか」という視点で仕事は探すものなんだよ、というお話がありました。たとえ難聴があったとしても、自分がやりたい仕事を選択していいんだって思ってもらえたのはとても良かったなと思いました。

このキャリアセミナーの詳しいレポートは次の「きこいろ」HPに詳しく掲載されています:

片耳難聴キャリアセミナー【初】イベントレポート

 


インタビューの続きは「知ってください片耳難聴」第2回でご紹介します。

次回もお楽しみに!

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