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こどもたちに最適なロジャー設定【オーディオロジーブログ】

フォナック ターゲットのアダプティブマイクロホン設定によって、教室で過ごすこども達にとって最適なロジャー用プログラムを設定することができます。どのようなこどもがそのメリットを得られるのか、それを知ることができる最近の調査をオーディオロジストのJodie Nelsonがご紹介します。

フィッティングソフト フォナック ターゲットの微調整画面で「ロジャーダイレクト」のプログラムオプションを開いたことはありますか?もしあったとしたら、ロジャーのアダプティブマイクロホン設定を標準(デフォルト)とデュアルのいずれかに設定する項目に見覚えがあると思います。

でも、デュアル設定に変更したことはありますか?切り替えることでメリットを得られるのはどんなユーザーなのか疑問に思ったことはありませんでしたか?その疑問を解決するために、まず2つの設定の違いを理解しましょう。

「標準」と「デュアル」、2つの設定にどのような違いがありますか?

ロジャーの特徴の一つに、ロジャー自動音量調整が挙げられます。これは環境内の騒音の変化にアダプティブに反応し、背景雑音が大きくなるとそれに負けないようロジャーマイクロホンの音量を大きくする機能です。この機能によって、騒がしい場所でもロジャーマイクロホンからの音声が常に良好なSN比を維持することができます。

この機能自体は、設定が標準でもデュアルでも同じです。ただし、SN比の改善プロセスにそれぞれ違いがあります。

  • 標準設定の場合、変化するのはロジャーマイクロホンからの音声だけです。
  • デュアル設定の場合、ロジャーマイクロホンの音声と補聴器のマイクロホン減衰が同時に変化します。

デュアル設定によって得られるメリットはどんなものでしょうか?

まず、どちらの設定でも背景雑音の大きさに関係なくSN比は等しいので、ことばの理解は等しいと予想されます。

ただし、デュアル設定においてSN比改善はロジャー音量の増加と補聴器のマイクロホン減衰の両方によって維持されるため、ロジャーを使用するユーザーの中には標準設定よりデュアル設定のほうがより快適だと感じる場合があります。

調査結果からどんなことが分かりましたか?

Wolfeらが実施した調査には、補聴器装用経験のある25人のこどもが参加しました。25人の参加者のうち21人はロジャーの使用経験がありました。

この研究において、SN比 +4 dBの環境下におけることばの理解度をロジャーのデュアル設定と補聴器のみで比較した場合、デュアル設定の方が平均32パーセント高い結果となりました。そして、アダプティブマイクロホンの設定が標準とデュアルのどちらであっても、ことばの理解度はSN比に関わらず有意差がありませんでした。

ロジャープログラムの標準設定とデュアル設定の比較 - 前方からのスピーチ

参加したこども達にどちらが好みか尋ねたところ、各環境下での回答をまとめた結果には有意差がなかったものの、標準よりもデュアルが好まれる傾向を示していました。参加者の大半(25人中の21人)がロジャーの使用経験があったため、標準設定の聞こえに慣れていたことが結果に影響している可能性があります。よって被検者の使用歴が質問の回答に影響を与えるかどうかを引き続き検証する必要があります。

どんな時にデュアル設定をつかえばよいのでしょうか?切り替えのタイミングは?

デュアル設定は、次のような条件が当てはまるこども(および大人)にメリットをもたらす可能性があります。

  • 初めてロジャーを使うユーザー
  • 大きな音に敏感なこどもおよび成人
  • こどもに予備利得が限られているフィッティングを施す場合
  • 一日の大半で音が大きいと訴えるこども

どちらを選ぶべきかを考える2つの質問

実際のフィッティングにおいて、ターゲット上でこどもにとって最適なロジャー設定を行うためのいくつかのヒントがあります。

  • 新規フィッティングですか?その場合、デュアル設定を用いてみてはどうでしょうか。
  • ロジャーユーザーの感想はいかがですか?もし大きい音が煩わしいようであれば、デュアル設定のほうが好まれる可能性があります。

 

この研究の詳細については、Journal of Educational、Pediatric&(Re)Habilitative Audiologyに掲載されたこちらの文献をご覧ください。

この記事は、2022年4月19日にPhonak Audiology Blogに掲載された記事を翻訳したものです。

 

著者:Jodie Nelson(フォナック本社 Pediatric Audiology Manager)

Jodieは、小児オーディオロジーマネージャーの立場から、フォナックが聴力レベルや種類を問わずあらゆる難聴のこどもに最高品質の小児向け補聴器製品群を提供できるよう努めています。彼女は常に「こどもはみな大切」をモットーとして働いています。彼女の知識はオーストラリアで小児オーディオロジストおよびクリニカルリーダーを務めた長年の臨床経験に基づくものです。

Jodieのことをもっと知りたい方は、こちらのページ(英語)もご覧ください。

参考文献

1.Wolfe, J., Neumann, S., Schafer, E., Towler, W., Miller, S., Dunn, A., Jones, C. & Nelson, J. (2021). Evaluation of a dual adaptive remote microphone system. Journal of Educational, Pediatric & (Re)Habilitative Audiology; 25, 3.

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