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補聴器装用の意欲を高める4つの動機づけ面接テクニック【オーディオロジーブログ】

動機づけ面接(Motivational Interviewing, MI)とは、聴覚専門家と相談者(補聴器ユーザーまたは補聴器装用の検討者)の関係に当てはめると、相談者の装用意欲(モチベーション)を高め、自ら行動を変えようと促進させるスタイルの面接です。これからご紹介する4つのテクニックを駆使することで、相談者の補聴器装用に対する気持ちを確かめるとともに、より意欲的になるよう導くことができます。

「現在あなたがいる場所 – そこがスタート地点です。」― Pema Chodron

初めて補聴器を装用する際にどのように増幅を求めるべきか?ということは相談者にとって最も大きな問題であり、かつ補聴器に関するお話をする際にも避けられない話題だと思います。

多くの場合、相談者は自ら進んで補聴器装用を行おうとはしません。例えば、「私には補聴器はまだ早い」と思ったり、「補聴器を買う余裕なんてあるのかしら?」と考えたりすることがあります。

この記事では、相談者が補聴器装用を検討する際に抱く意欲や複雑な感情を把握するために、どのようにして動機づけ面接を活用すればよいかご紹介いたします。

この動機づけ面接のテクニックは他のヘルスケア分野でも活用されており、研究からも補聴分野において同じく有用であることが示されています1

実践で使える4つの面接テクニック

仮に、友人や家族が厄介な問題について話している場面を想像してください。その友人や家族は、困難とその解決方法を模索しており、あなたにもその手助けができるチャンスがあります。これは、あなたの目の前の相談者についても同じことが言えます。

では、活用できるテクニックをご紹介いたします:

  1. 傾聴する

話題の中心を相談者に置きましょう。補聴器の特徴や事実を説明するだけではなく、相談者が何に困っているのか、どんな環境にあるのかに焦点を当てましょう。

相談者がどうしてあなたの元に訪れたのか、信頼関係を築いてヒアリングしてみましょう。例えば、昨年ではなくなぜ今日来店したのか、具体的にどのような困り感を抱いているのか、それが生活にどのような影響を与えているのか、といった質問してみましょう。相談の本当の理由を明確に理解することが、次のステップの鍵です。

  1. 共感する

相談者が自分の経験を話し、それによって抱く感情を受け入れてくれる場所を用意しましょう。動機づけ面接のテクニックは、敬意と好奇心に基づいています。相談者の自主性を尊重し、自然な行動の変化を促すプロセスを生み出しましょう。

  1. 同意する

自分が相談者の立場ならば、と想像してください。どのような気持ちになるのか想像できたでしょうか?相談者が抱くその気持ちを私はしっかりと理解していると伝えましょう。そして相談者にもっと饒舌になってもらいましょう。これにより、信頼を築き協力関係をより高めることができます。

  1. 協力する

解決策を見つけるため、一緒に取り組みましょう。補聴器を購入する人は、日常生活において具体的かつ大きなメリットがあることを理解しています。

例として、ある女性の相談者が来店しました。彼女は、毎月の昼食会で友人の話が理解できないことがどんなにイライラするか、どのくらい孤独を感じているか語ってくれました。そんなときは、その友人の話がよく聞こることで相談者の人生がどう変化するのか、相談者自身が想像できるような手助けをしてみてください。

「お友達との会話がスムーズにできるようになることは、あなたにとってどのくらい価値のあることですか?もしそうなったら、どのような気持ちになりますか?」と尋ねてみるのもいいでしょう。相談者自身に変化を認識してもらうために、このような質問がきっと役立つことでしょう。

動機づけ面接は、相手の力を引き出すための方法の一つです。傾聴と提案を合わせて実施することにより、相手が自分自身の苦悩に向き合い解決に向けた可能性に気づく手助けとなります。相手の意欲を推し量ること、そして解決策を受け入れた姿を想像できるようサポートしましょう。

相談者は話を聞いてもらえることで感謝の気持ちを抱き、問題解決に向けた意欲が高まれば高まるほど、補聴器購入に踏み切る可能性が高まります。

また、補聴器装用が相談者にとってより良い結果をもたらす可能性も高くなります。補聴器購入の意欲と目標を十分に話し合い、適切なサポートを提供することで、その人にとって最適な補聴器を提案し装用してもらうことができれば、それこそが双方にとってのなによりの喜びと言えるでしょう。

さらに詳しく知りたい方は、以下の記事(英語)をご覧ください:

  • David Citron, I. (2020). Motivational Interviewing in Audiology: How to Become an Appreciative Ally(聴覚学における動機づけ面接:感謝される味方になるには). http://bit.ly/HJcurrent.
  • Ridgway, J., Hickson, L., & Lind, C. (2013). Self-determination theory: Motivation and hearing aid adoption(自己決定理論:モチベーションインタビューと補聴器装用について). Journal of the Academy of Rehabilitative Audiology, 46.
  • Vestergaard Knudsen, L., Öberg, M., Nielsen, C., Naylor, G., & Kramer, S. E. (2010). Factors influencing help seeking, Hearing aid uptake, hearing aid use and satisfaction with hearing aids: A review of the literature(補聴器相談の背景と補聴器の検討および装用、補聴器に対する満足度の文献的考察). Trends in Amplification, 14(3), 127–154. https://doi.org/10.1177/1084713810385712

 


この記事は、2022年8月16日にPhonak Audiology Blogに掲載された記事を翻訳したものです。

参考文献
  1. Solheim, J., Gay, C., Lerdal, A., Hickson, L., & Kvaerner, K. J. (2018). An evaluation of motivational interviewing for increasing hearing aid use: A pilot study. Journal of the American Academy of Audiology, 29(08), 696–705. https://doi.org/10.3766/jaaa.16184

著者:Amy Sarow(Clinical Audiologist)

Dr. Amy Sarowはアメリカのセントラルミシガン大学で学士号を取得し、アイオワ大学で聴覚学の修士号を取得しました。フロリダ州ジャクソンビルのメイヨー クリニック オブ ヘルス サイエンスで4年間臨床研修医を務めました。現在はミシガン州に在住しています。彼女のブログはAmySarow.comでご覧いただけます。

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