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学校生活で聞き取りに困難を抱える子どもが有利になる条件とは?【オーディオロジーブログ】

一側性難聴や聴覚処理障害のある子どもたちが先生の話をよく聞き取るには、どうしたらよいのでしょうか?最近の2つの研究から明らかになった、ロジャー フォーカス II のメリットをご紹介します。

一側性難聴 (UHL) または聴覚情報処理障害 (APD) を抱える子どもたちが、クラスの同級生よりも優れた成績を収める可能性について考えたことはありますか?

騒音下で声が離れた場所から届く場合ならありえます、ですか。はい、大正解です!

しかし、そのように言い切るためにはもう少し裏付けが必要ですよね。どうすれば同級生たちを凌ぐことができるでしょうか?今回は、最近の2つの研究の結果を取り上げます。どちらの研究でも、ロジャー フォーカス II を介入機器として用いました。

一つは米国オクラホマ州の Hearts for Hearing で実施された一側性難聴児らを対象とした研究、もう一つはオーストラリアのメルボルン大学で実施した APD 児らを対象とした別の研究です。

では、これらの子どもたちはどのようにして同級生よりも優れた成績を収めたのでしょうか?また、彼らの「同級生」とは誰でしょうか?

研究1 – 一側性難聴児とロジャー フォーカス II

一側性難聴は軽微な問題ではありません。2019年、国際専門家パネルは一側性難聴児の管理に関するガイダンスを提供するためのガイドライン (Consensus practice parameter: audiological assessment and management of unilateral hearing loss in children)を開発しました。このガイドラインでは一側性難聴児が直面する潜在的な問題を明らかにし、検討可能な治療と対処の方法に関するガイダンスを提供します。このガイドラインが示す重要なメッセージは一側性難聴を抱えるすべての子どもが介入の機会を与えられるべきだということです。

一側性難聴児が属するグループの子どもたちと関わるとき、私の頭の中には「教室における聞き取りの改善は、一側性難聴に起因する教育上の問題を少しでも改善できているのか?」という疑問が湧き起こります。

Hearts for Hearing 研究では、16人の一側性難聴児と10人の(「正常聴力」を持つ)同級生を対象に、ロジャー フォーカス II を使用した場合と使用しない場合における会話の理解度を測定しました。研究では教室内のさまざまな位置を想定し、複数の距離についてそれぞれ静かな場所と騒がしい場所、2つの条件で測定しました

結果は以下の通りです。

これらの結果から、たとえ静かな環境でも、離れた場所に座っている一側性難聴児は先生の話がよく聞き取れていないことがわかります。

ただしロジャー フォーカス II を使用した場合と使用しない場合を比較すると、音環境の良し悪しに関わらず一側性難聴児のことばの理解度は大幅に向上しました。

実際、騒がしい教室を模した環境でロジャー フォーカス II を使用すると、一側性難聴児たちは離れた教師らの会話を通常の聴力を抱える同級生よりもはるかによく理解しました(5メートルの距離で53%も上回っています)。

研究 2 – APD児とロジャー フォーカス II

もう一つは APD を抱える子どもたちの研究です。メルボルン大学の研究者は、音声明瞭度と聴覚的および視覚的注意に焦点を当てました。この研究では APD 児らの注意を主観的ではなく客観的に測定したため、他の研究とは異なるものです。

査読済みの論文はまだ公開されていないことから、参考文献リストにある出版物では、APD 児のグループ全体の平均を反映した APD 児の一人である「メグ」の結果が用いられました。この結果を対照群の平均と比較しました。対照群は両耳の聴力閾値が正常な発達中の子ども10人でした。

聴覚的注意課題

結果は、ロジャー フォーカス II が静かな教室でも APD 児らにメリットをもたらす可能性を示しています。5メートル離れて座っていても、彼らは非常によく教師の声を聞きとることができます。また、ロジャー フォーカス II を使用した場合、APD 児の会話の明瞭度は、ロジャー フォーカス II を使用しなかった同級生を大幅に上回る可能性があります。

これらは特段驚くべきことではないでしょう。APD 児らは雑音下で離れた場所からの聞こえに困難を感じますが4,5、ロジャーシステムは話し手の声を身に着けたマイクによって直接子どもの耳に届けることが判っています。

興味深いのは、ロジャー フォーカス II が APD 児らにどれほどの改善をもたらすのかということです。子どもが常に先生の近くに座るとは限らず、教室が静かであるとも限りません。教師の話し声の聞き取りに困難を生じる場合、それを軽減するためにロジャー フォーカス II が役立ちます。

視覚的注意課題

興味深いもう一つの研究結果は、ロジャー フォーカス II が聴覚的注意に及ぼす影響です。ケーススタディでは、距離と騒音による聴覚的注意への影響だけでなく、視覚的注意にも影響があることが分かりました。ロジャー フォーカス II を使用すると、聴覚的および視覚的いずれの注意課題でもスコアが正常範囲内にまで向上しました(灰色の網掛けのゾーン)。下図を参照してください。

ロジャー フォーカス II は、臨床や学校で関わる一側性難聴児や APD 児らに利益をもたらすでしょうか?これらの研究に基づけば、答えは「はい」です。試してみる価値はあります。

ロジャー フォーカス II の詳細については、当社の Web ページをご覧ください。

参考文献
  1. Bagatto, M., DesGeorges, J., King, A., Kitterick, P., Laurnagaray, D., Lewis, D., Roush, P., Sladen, D. P., & Tharpe, A. M. (2019). Consensus practice parameter: audiological assessment and management of unilateral hearing loss in children. International Journal of Audiology, 58(12), 805–815. https://doi.org/10.1080/14992027.2019.1654620
  2. Nelson, J. & Dunn, A. (2021). Roger Focus II in children with unilateral hearing loss. Phonak Field Study News. Retrieved from www.phonak.com/evidence, accessed January 2023.
  3. Nelson, J., & Shiels, L. (2022). Roger Focus II: A solution for auditory processing deficits. Phonak Field Study News. Retrieved from www.phonak.com/evidence, accessed January 2023. The peer review paper is currently in preparation.
  4. Lagacé, J., Jutras, B., & Gagné, J. P. (2010). Auditory Processing Disorder and Speech Perception Problems in Noise: Finding the Underlying Origin. American Journal of Audiology, 19(1), 17-25. https://doi.org/10.1044/1059-0889(2010/09-0022)
  5. Howard, C. S., Munro, K. J., & Plack, C. J. (2010). Listening effort at signal-to-noise ratios that are typical of the school classroom. International Journal of Audiology,49(12), 928-932. https://doi.org/10.3109/14992027.2010.520036

この記事は、2023年1月17日にPhonak Audiology Blogに掲載された記事を翻訳したものです。

著者:Jodie Nelson(フォナック本社 Pediatric Audiology Manager)

Jodieは、小児オーディオロジーマネージャーの立場から、フォナックが聴力レベルや種類を問わずあらゆる難聴のこどもに最高品質の小児向け補聴器製品群を提供できるよう努めています。彼女は常に「こどもはみな大切」をモットーとして働いています。彼女の知識はオーストラリアで小児オーディオロジストおよびクリニカルリーダーを務めた長年の臨床経験に基づくものです。

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