オーデオ ルミティが「聞き取れない」という感覚を克服する方法【オーディオロジーブログ】
難聴を抱えていると、暗闇で会話を聞き取ろうとしているように「どうしてもうまく聞き取れない」と感じる場合があります。この記事では、オーディオロジストのDavid Crowhenがことばの理解を向上させるフォナック オーデオ ルミティの機能をご紹介します。
そう言えば私が卒業した当時は、トリムポット式補聴器がまだ存在していました。そのため新しい製品が発売されるたびに、技術がどれだけ進歩したかを考えさせられます。フォナックの75年にわたる聴覚技術革新の歴史はとても素晴らしく、そしてここで紹介しきれないほど多くあります1。
私のお気に入りを図1のようにまとめました。1.5~2メートルのような近距離2,3で騒音下において前方からのことばの理解を改善する片耳指向性(AudioZoom、1995年頃)から両耳指向性(ステレオズーム、2012年頃)機能や補聴援助システム ロジャーまで、聴覚技術の革新が幅広く存在しています。
ロジャーは、従来のFMシステムが抱えていた周波数管理・干渉の問題を解決しました4。そして適応型アルゴリズムと様々なマイクロホン(小グループモード、マルチトーカーネットワークなど)を組み合わせて使用することで、従来の固定ゲインシステムを超える聴覚パフォーマンスを提供することができます5-10。
近年、フォナックは以下のように利便性や使いやすさの面に力を入れて革新を続けています:
●リチウムイオン電池技術による充電式補聴器(オーデオ B-R、2016年発売)
● ユニバーサル接続性を持つBluetooth対応補聴器(オーデオ マーベル、2018年発売)
● タップコントロール機能を搭載された補聴器(オーデオ パラダイス、2021年発売)
● ヘルスケアデータの追跡、そして防水性*と防汗性を備え安心感を与える補聴器(オーデオ ライフ、2022年発売)
*水深最大50cm
図1:フォナック革新的な75年の歴史の中で著者がお気に入りの技術・製品
ことばの理解は依然として重要なニーズである
便利で使い勝手の良い機能があると、より簡単に補聴器を使用することができ11、12、満足度も向上します。ユーザーが安心感を持って補聴器を使用することが満足度を高める一つの要因としてよく知られています。また、「音の明瞭さ」「騒音下での使用」「グループ会話でのことばの理解」なども要因になります13。
これは最新の消費者調査14結果を反映しています。以下のようなコミュニケーション ニーズが引き続きエンドユーザーから注目されていることが調査からわかっています:
● 静かな場所での小さい声の会話
● 騒音環境下の1対1の会話
● 騒がしい環境でのグループ会話に対することばの理解度
上記のようなインサイトにより、以下のことが考えられます:
● 会話の~20%は前方から発せられるものではない15
● 騒音が少ない環境でも強度の指向性を好む16
● 手動でプログラムを選択した場合より、オートセンスOSを利用した場合のほうが分類の精度が高く、結果的にパフォーマンスが向上されている16
これらはオーデオ ルミティに搭載されている2つの新機能、「ステレオズーム2.0」および「スピーチセンサー」の開発と関連しています。
ステレオズーム 2.0: さらにスムーズ、スマート、ストロング
ステレオズームは、フォナック オーデオ ルミティでさらに進化を遂げました。マイク設定の切り替えがよりスムーズになりました。騒音レベルが低くてもより強い指向性を好むという調査結果16を受け、よりスマートな(低い)起動レベルに設定しました。そしてユーザーはマイフォナック アプリを利用してステレオズーム 2.0の強度をさらに高めることができます。
その結果として、正面から話しかけられた場合は従来の固定型指向性より、ことばの理解が16%と大幅に向上されたことが明らかになりました18。
スピーチセンサー
では、話し手が正面にいない場合、いわゆる横方向もしくは後方から話しかけられた場合はどうなるのでしょうか15。 そこで、「スピーチセンサー」が登場します。スピーチセンサーは、話し手の位置を自動的に検出します。このように、主なことばがどの方向から来ているかを判定して、そのデータをオートセンス OS 5.0に送ることで最も適切な指向性設定を起動させます19。
スピーチセンサーの効果および各マイクロホン モードを表 1 に示しています。ことばの理解が向上される以外に、右側/左側などの横方向および後方から話しかけられた場合の聴取努力が11%軽減されたという結果も示されました18。
音声の方向 | マイクロホン モード | 概要説明 | 利点17 |
前方 | ステレオズーム 2.0 | 前方に鋭角なビームを形成する両耳指向性 | デフォルト設定である固定型指向性よりもSN比を1.6 dB改善 |
右側/左側 | 固定型指向性 | 横方向からの音を認識しやすくなるため、頭の向きを話し手に向けることが可能 | 従来のステレオズームより、横方向から話しかけられた場合の語音了解閾値(以下、SRT)が1.7dB改善(ことばの理解が17%向上されたと相当) |
後方 | リアルイヤーサウンド(RES) | 1500Hz以下は無指向性、それ以上は指向性 | 従来のステレオズームより、後方から話しかけられた場合のSRTが 1.4 dB 改善(ことばの理解が14%向上されたと相当) |
表1. 指向性ビームフォーミングの構成と様々な聞き取り環境において得られる利点のまとめ18
オーデオ ルミティは、難聴による聞き取りにくさを軽減するソリューションの一つです。オーデオ ルミティはことばの理解の向上に重視した製品であり、革新的な機能が搭載されたことにより騒音下においても聞き取りの向上が期待されます。
フォナック オーデオ ルミティについてさらに詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
参考文献
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この記事は、2022年11月15日にPhonak Audiology Blogに掲載された記事を翻訳したものです。
著者:David James Crowhen(コマーシャル&オペレーションズ ディレクター;ソノヴァ ニュージーランド/ オーストラリアとニュージーランドのオーディオロジー ディレクター)
Davidは10年以上フォナックで勤務しています。音楽と人助けに関心を持っているためオーディオロジストになり、1999年にニュージーランドのオークランド大学で聴覚学の修士課程を卒業しました。そしてニュージーランドおよび海外の公的機関と私的クリニックで10年間臨床に携わりました。彼は先進的な補聴器やワイヤレス通信技術について特別な関心を持っており、ユーザーや家族のニーズに基づいたフィッテングや臨床現場における機能の検証および評価をサポートしています。