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家族を巻き込むことで、患者満足度を向上させよう【オーディオロジーブログ】

 

クイーンズランド大学とソノヴァが共同で行った研究では、成人の聴覚診察に家族中心のケア(以下、FCC)を導入することで患者の診察に対する満足度が向上することが示されました。

「成人の聴覚診療に家族が同席する機会を増やすにはどうすれば良いのか?そして、家族の同席は患者の診療結果にポジティブな影響を与えるのか?」

これらは、オーストラリアにあるクイーンズランド大学の研究チームが最新の研究で明らかにしようとした疑問です。

先行研究から、成人の聴覚診療におけるFCCの利点が示唆されました。ただしFCCを臨床に取り入れ、その実態を調査した研究はこれまでほとんどありませんでした。今回、クイーンズランド大学が行った研究は成人の聴覚診察においてFCCを実施するための介入を行いました。介入の目的は次のとおりです:

2段階の介入を実施し、成人の聴覚診察における家族の同席とそれによる変化を評価すること

家族の同席とそれによる変化が、患者の診療結果と満足度にどのような影響を与えるかを評価すること

FCCの介入について

この介入は、クリニックの受付、聴覚専門家、管理職など全てのスタッフが関わる全体的な取り組みでした。介入は2つの段階を経て実施されました。

介入1:スタッフに対し、全ての予約電話やリマインダー/確認メールにおいて診察の際に家族の同席を促すようトレーニングを行いました。

介入2:スタッフに以下の2つのトレーニングを行いました。

  • 診察室を家族がより診察に参加できるようなレイアウトにする
  • 来院の際に患者とその家族の両方へ宿題を課す

介入の結果について

介入を実施することによって、以下のことが示されました:

家族の関与が増えた

診察時の家族の同席率は26%から48%へと高まりました。

 

 

 

 

 

 

診察室のレイアウトがより受診しやすい配置になった

家族、患者、そして聴覚専門家の椅子がそれぞれ等間隔となるよう三角形に配置しました。以下、介入前(標準ケア段階)と介入後(介入2段階)の典型的な部屋のレイアウト図を示します。※A =聴覚専門家、 C =患者、 F =家族

聴覚専門家と家族の関わりが深まった

家族の関与を促す明確なアジェンダは設定されませんでしたが、聴覚専門家は診察中に家族により多くの質問をし、家族が確実に関わるようにしました。

家族がより関わるようになった

映像分析では、会話時間の長さについてはさほど改善が見られなかったものの、いくつかの指標において家族の関与の改善が示されました。

患者の満足度が向上された

MPOC-Aという成人のケアにおけるプロセス尺度およびNet Promoter Score(以下、NPS)という評価尺度を用いて、診察全体に対する満足度を測定しました。その結果、診察全体に対する満足度が非常に高くなったことが示されました。特にNPS、これは「このクリニックを友人や同僚におすすめしたいですか?」を評価する尺度ですが、介入前の評価スコアは「22」で、介入後は「83」まで上昇しました。NPSはスコアが高ければ高いほど、サービスに対する満足度が高いことを示しています。

 

 

 

 

 

 

研究結果から得られた知見

この研究によると、診察時に家族を同席させることで、サービスに対する患者満足度の向上につながることが示されました。また、クリニックでFCCを成功に実施するためには、スタッフ全員を含むクリニック全体における持続的な取り組みが必要です。診察の予約電話やメールの対応を行う受付スタッフは、家族が同席するよう促す重要な役割を担っています。

この研究についてより詳細な内容を知りたい方は次の論文(英文)をお読みください:

Ekberg, K., Timmer, B., Francis, A., & Hickson, L. (2022). Improving the implementation of family-centred care in adult audiology appointments: A feasibility intervention study. International Journal of Audiology, DOI: 10.1080/14992027.2022.2095536.


この記事は、2022年12月18日にPhonak Audiology Blogに掲載された記事を翻訳したものです。

著者:Katie Ekberg(オーストラリア クイーンズランド大学 健康・リハビリテーション学科 リサーチフェロー)

Dr. Katie Ekbergは、難聴・心理社会的問題および成人と小児に対する聴覚サービスの理解と実践の改善に関する研究を行っています。

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