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フォナックのエンジニアは音の鑑定士!?【オーディオロジーブログ】

コーヒー鑑定士が最高の味のコーヒーを淹れるためにフレーバーホイール(コーヒーを車輪のようなグラフでカテゴリー分けするもの)を使うように、フォナックのエンジニアは最高の補聴器を作るためにはどのような音が必要かを理解するためサウンドホイールを使っています。3人のフォナックの音の鑑定士による記事をご紹介します。

朝のコーヒーをどんな言葉で表現しますか?濃い?薄い?ミルキー?

コーヒーの味を表現する110の言葉が公式に認められていることをご存知ですか?コーヒーテイスターズフレーバーホイールは、スペシャルティコーヒー協会*が1995年に発表したもので、コーヒー業界の専門家向けに標準的な語彙を提供しています。このホイールは、コーヒーの良し悪しを判断するためのものではなく、コーヒーの専門家や愛好家がコーヒーの香りと味を表現するためのものです。

音についてはどうでしょう?あなたは水の流れる音をどんな言葉で表現しますか?紙の擦れ合う音は?聴覚エンジニアは、さまざまな種類の音、音の環境、あるいはアーティファクト(ノイズなど不要な音)をどのように表現するのだろうか?

この記事では、音質に関する基本的な用語と、フォナックのサウンドエンジニアが補聴器の音を向上させるためにどのようにサウンドホイールを使用しているかをご紹介します。

共通言語の必要性

効果的なコミュニケーションには共通言語が必要です。的を射た定義は効果的なコミュニケーションに役立ち、それにより第一印象を超えて物事を見ることができます。例えば、あなたには好きなコーヒーショップとそうでないコーヒーショップがあるかもしれません。しかし、お気に入りの一杯を決めるのは、味の微妙な違いなのです。

コーヒーの味が甘かったり、酸っぱかったり、新鮮でないように、音もブーンとしていたり、こもっていたり、ざわざわしていたりします。そして、味蕾(みらい)を鍛えてより繊細な味を識別することができるように、耳を鍛えてより繊細な音の特徴を聞き分けることができるのです。

聴覚業界が同じ見解を持ち続けるために、音の属性を整理するための標準化された語彙とサウンドホイールが開発されました。

サウンドホイールが音の属性を理解するのに役立つ理由

フォース・テクノロジー社のセンスラボは、補聴器を含む各種オーディオ製品の音質評価を専門とするデンマークの独立試験所です。センスラボは、音質の知覚特性を評価するためのサウンドホイールを開発しました。

図1. センスラボのサウンドホイール(写真リンク

サウンドホイール(図1)は、6つの大まかなカテゴリー(内側の円)に分けられ、外周に42の詳細な記述項目があります。カテゴリーは、ラウドネス・ダイナミクス・音色・空間特性・透明度・アーティファクトに区別されます。

「ラウドネス」、「ダイナミクス」、「音色」は、補聴器の利得設定の問題を説明したり特定したりするのに優れたカテゴリーです。例えば、閉塞感によって自分の声がブーンと聞こえることがよくあります。中音域が過度に強調されると、鼻にかかったような音質になります。また、高音域が強すぎると、甲高い音に聞こえることがあります。

補聴器のフィッティングの際に注意すべきもう一つのカテゴリーが「空間」です。例えば、指向性マイクのような補聴器の機能によっては、後ろや横からの雑音を抑制することで、音源の空間的な側面を変化させます。このような状況では、より良い音声の明瞭さのために、空間的な包括感の減少が受け入れられます。

「アーティファクト」は、音色や音の空間的側面とは関係のないアーティファクトに対応するものです。「アーティファクト」カテゴリーを使って、ヒスノイズや、突発的な大きな音の入力時の歪みなどを表現できます。

音質は選択です。そして、聴覚パフォーマンスも同様です。フォナックのエンジニアチームは、サウンドホイールを使用して、可能な限り最高の音質を保ちながら、難しい聞き取り状況でも聴覚パフォーマンスを向上させる機能を慎重に設計しています。

サウンドホイールを手の届くところに

サウンドホイールは、音質特性を常に念頭に置くための総合的な概要を提供します。既にサウンドホイールにある属性を使って、顧客に音質の違いを説明している方もいらっしゃるでしょう。次のステップとして、サウンドホイールにある使ったことのない音質のカテゴリーや説明の仕方を試してみてはいかがでしょうか。自分にとってどんな方法が最も効果的か、そして最も重要なことですが、顧客とのさらなる効果的なコミュニケーションを提供できるものを見つけてください。

そんなことを考えながら、「賑やかな…」、えーと、「甘い」モーニングコーヒーを楽しみます。

* スペシャルティコーヒー協会は、世界中の生産者からバリスタまで、何千人ものコーヒー関係者を代表する非営利の会員制組織です。

リンク:SenseLab listener panels ensure optimal sound quality evaluation (forcetechnology.com)


この記事は、2023年7月18日にPhonak Audiology Blogに掲載された記事を翻訳したものです。

共著者:

Stefan Raufer(Audiological Researcher)

2021年にソノヴァに入社し、現在は補聴器の新機能のための聴覚学的コンセプトの開発に携わっています。他のチームと共に、最新技術を製品に反映させ、新技術がユーザーのメリットにつながるようにしています。ハーバード大学で博士号を取得。

Frédérick Jehle(Audio & Development Engineer)

2021年にソノヴァに入社し、現在は知覚モデルや技術測定用ツールの開発に取り組んでいます。ウィーンの音楽・舞台芸術大学のディプロム・トーンマイスターを取得。 プロフェッショナルオーディオ再生と自動車オーディオのバックグラウンドを持っています。

Hannes Wüthrich(Senior Expert Hearing Performance )

2006年よりソノヴァに勤務し、研究開発部門に所属。主な研究分野は、補聴器の性能を評価する方法とツールの開発。スウェーデンのボルレンゲにあるダーラナ大学で電気工学の修士号を取得。

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