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新学期に向けて子どもたちの補聴器をチェックしましょう【オーディオロジーブログ】

みなさんもきっと、子どもの頃には長い休みの間にいろいろな体験をした記憶があると思います。この記事では、新学期に子どもたちを迎える際ぜひチェックを検討して欲しい項目を挙げました。

新学期が始まると、冬休みにスキーや雪あそび、夏休みなら海やプール、日焼け止めに触れていた子どもたちが学校に戻ってきます。

こういった子どもたちにとって楽しい思い出は、一方でもれなく補聴器とアクセサリーにとって何らかのダメージをもたらす可能性を孕んでいます。学校の先生や聴覚専門家、保護者らは新学期に向けてそれらが正常に機能しているかどうか、注意深く確認する必要があります。

子どもの補聴器ケアバッグに入れておくものリスト(予備の電池や掃除用具、先生向けの操作メモなど)のような保護者向け資料はたくさんありますが、補聴器装用児たちが新学期を迎えるにあたり、専門家はどのような点に注意するべきでしょうか。

聴覚専門家向け新学期チェックリスト

1. 補聴器に一般的な摩耗や損傷はありますか?

夏や冬は補聴器とイヤモールドに負担がかかります。マイクには砂埃やローション、もしかしたらお菓子のカケラが詰まっているかもしれません。目視とリスニングチェックを適切に行うことで、マイク音口やチューブ、イヤフックの清掃・交換または修理の必要性に気づくかもしれません。

イヤモールドの導音管に亀裂が入っていたり、水滴が付着したりしていませんか?温泉やプールに気分が高まり、補聴器を乱暴に扱うと導音管やイヤモールドの亀裂や破損につながり、それがハウリングリスクの増大に繋がります。日焼け止めなどの塗り薬、スキンオイル、日光に晒されることもチューブの劣化や収縮で収縮し、装用感や快適性に影響を与える可能性があります。

2. イヤモールドが耳にフィットしていますか?

新学期には、休み前に比べて一回り大きく見えるほど著しい成長を見せる児童が少なくありません。こういった大きな身体の変化はイヤモールドの収まり方にも影響し、外耳道とイヤモールドの間に隙間が生まれる可能性があります。

イヤモールドの周囲に緩みや隙間がないかチェックしてください。このチェックを怠ると子どもが頭を動かしたときだけでなく座っているときにも不快なハウリングを引き起こす可能性があります。また、「お気に入りのカラー」への強いこだわりがなくなって、新学期に向けて別の色のイヤモールドを検討してもいい児がいるかもしれません。このような場合はその場しのぎの対処法はありませんから、速やかに、新しいイヤモールドを注文する必要があります。

3. 聴力に変動はありませんか?

小児難聴は時間の経過とともに進行する可能性があり、休校期間に大きく変化している可能性があります。その場合、次回の補聴器フィッティングでその変化を反映させるために聴力測定が必要です。聴力の変動を把握しておくためにも直近の耳鼻科医受診があるかどうか確認しましょう。

4. 実耳測定の必要はありませんか?

実耳測定はいまや補聴器フィッティングにおいて年齢に関わらず幅広く推奨されていますが、ことばや声を持たない可能性のある子どもにとって、状況が変わったときに私たちに伝えることは特に重要です。

McCreery・Walker (2017) は3歳以上の子どもを対象に、少なくとも年に1回のRECD(実耳カプラ差特性)測定を推奨しています。学齢期の子どもの場合プローブチューブによる測定によって、外耳道の容積に合わせて補聴器利得が適切に調整されているかどうかを確認できます。イヤモールドの交換や聴力レベルの変化があった際はその都度実耳測定を行う必要があります。

5. 彼らの機器がロジャーやBluetooth(R)を利用可能になっていますか?

新学期に子どもたちが新しい補聴器を身につけて登校することもよくあります。よく用いられている小児向け補聴器用のオーディオシューを予めいくつか用意しておくとスムーズです。始業式の日に新旧両方の機器がロジャーに接続可能かを確認する必要があります。

電話やタブレット端末との接続を検討する年齢の児童もいるかもしれません。機器がBluetooth対応であるかどうかの確認も、新学期のチェックのリストに追加する必要があります。

6. 自分で機器のコントロールが可能な段階に達していますか?

最後に、マイフォナックジュニアのようなアプリを使用して、一段と複雑化する聴取環境を自分でコントロールすることで得られるメリットがあるかどうか検討してください。

 

これに限らず、常に専門家と保護者、そして学校の先生との間に緊密なコミュニケーションを構築することは、学校における新年度の聞こえと学び、交友関係に悪影響を与える前に、子どもの補聴機器の問題を見つけ出して解決するための鍵となります。

Kris Englishによる以前のブログ記事では、家族との会話をサポートし、推奨事項の効果を高めるために設計されたコミュニケーションツールについて説明しています。記事はこちらからご覧ください(英語)。

 


この記事は、Phonak Audiology Blogに掲載された記事を翻訳・加筆したものです。

著者:Dawn Violetto Au.D. (Child’s Voice聴覚学ディレクター)

Child’s Voiceとは難聴児たちが一般的な教育を受けられるように開かれた、生まれてから小学2年生までの間のことばと聞こえの学校です。教育、アドボカシー、励ましを通じて、家族が子供たちと一緒に旅をすることができるよう支援します。Child’s Voiceには、早期介入、聴覚学、学校プログラムがあります。

共著者:Nikolas Klakow(フォナック米国 クリニカルトレーナー)

ニコラスは、米国西部のクリニカルトレーニングマネージャーです。エマーソンカレッジ(BS)、ノースカロライナ大学チャペルヒル校(MS-Audiology)、ペンシルベニア大学視覚科学部(AuD)で学びました。また病院や調剤薬局の設立などに関わり9年間にわたって臨床現場の経験を積みました。2002年からは補聴器メーカーで営業担当として勤務し、現在クリニカルトレーナーのマネージャーを務めています。

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