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ウェルビーイング ― 補聴援助システム「ロジャー」で聞き取りの課題を克服【オーディオロジーブログ】

聞き取り環境によって、「聞く」ことがユーザーにとって疲れる場合があります。この記事では、補聴援助システム「ロジャー」を用いて会話の理解とコミュニケーションを向上させることが、どのように認知、社会・感情、身体的ウェルビーイングの改善につながるかをご紹介いたします。

補聴器は長い間、聴覚知覚を改善するためのソリューションとして利用されてきましたが、ロジャーのような革新的なテクノロジーにより、「聞く」体験が新たな次元に進化しました。

ロジャーは、特に騒がしい環境や遠く離れた場所、SN比が悪い環境での会話に対する理解やコミュニケーションを向上させるために設計され、様々な送信機と受信機があります。ロジャーは特に難聴者にとって役立ちますが、最近の研究では、ロジャーが健聴者にも大きな利点をもたらすことが示されています

この記事では、ロジャーがどのように補聴器の限界を超え、聞き取り困難な環境において認知的、社会・感情的、身体的症状を改善するかを探求します。

認知的ウェルビーイングへの利点

聞き取りの課題とは、単に「音を聞くこと」にとどまらない場合が多いです。例えば騒がしい環境での会話への理解は、難聴者にとって特に負担がかかります。ロジャーは高度なデジタル処理とワイヤレス通信を利用し、騒がしい環境での会話への理解を向上させることで、この問題に取り組んでいます

その一例として、マルチトーカーネットワーク機能は、話者の声を捉えて直接ワイヤレスでユーザーの補聴器もしくはデジマスタ―に送信します。これにより、最適なSN比が維持され、背景騒音が減少し、音声信号の明瞭さが向上されます3

ロジャーは聴取努力を軽減して会話への理解を向上させることで1、ユーザーがより効果的に会話に参加できるようになります4。その結果、精神的な疲労、緊張、フラストレーションが軽減され、認知的ウェルビーイングが促進されます。

社会・感情的ウェルビーイングへの利点

難聴と共に生きることは、社会的孤立、不安、感情的苦痛を引き起こすことにつながりかねません5。ロジャーを使用することでコミュニケーションと社会的交流が向上し、それらネガティブな感情に対処することが可能です。背景騒音や遠距離などの悪影響を最小限に抑えることで、ユーザーが積極的に会話に参加し4、他者とつながり、人間関係を強化することができます。

さらに、ロジャーを使用することで会話への理解が向上され、ユーザーは趣味活動、教育活動、社交の場など様々な生活場面で自信を取り戻すことができます。苦労せずに積極的に会話に参加でき、また会話を理解する能力は、ユーザーの自尊心を高め、難聴に伴う精神的負担を軽減することに役立つかもしれません。

身体的ウェルビーイングへの利点

ロジャーは認知的、感情的な利点だけでなく、難聴者にとって身体的利点も提供します。従来の補聴器は大規模なグループ会議、教室、カンファレンスなど、音が様々な方向や距離から届くような聞き取り環境においては限界があります。ロジャーは革新的なワイヤレス伝送を利用することで、そのような課題を克服しました。

ロジャーは補聴器と簡単に接続し、より信頼性の高いかつ安定した音声を提供することができます。会話への理解の向上および聴取努力軽減により、ユーザーはより効果的かつ自然な聞き取りを楽しむことができます。そうすることで、身体的な不快感や聞き取りの負担が軽減され、より良い聴覚的健康と総合的ウェルビーイングの促進につながります。

総合的ウェルビーイングの向上

ロジャーは会話への理解とコミュニケーションの向上、背景騒音の低減を可能にすることで、従来の補聴器限界を打ち破ります。聴取努力を最小限に抑え、社会的つながりを育み、全体的なウェルビーイングを高めることができるため、騒がしい環境や話し手との距離が離れている場合において、会話をよりよく理解しようとする方にとってロジャーは非常に役に立つツールです。

ロジャーはテクノロジーが進化し続ける中、あらゆる聞き取り環境において難聴者がウェルビーイングを維持できるよう聞き取りをサポートしている優れた例です。

 ロジャーについて詳しく知りたい方は、ぜひこちらの製品ページをご覧ください。

 


この記事は、2024年1月16日にPhonak Audiology Blogに掲載された記事を翻訳したものです。

参考文献
  1. Rodrigues, T. & Latzel, M. (2023). Reduced listening effort and improved speech intelligibility with Roger™ SoundField. Phonak Field Study News. Retrieved from the Phonak Evidence Library, accessed January 16, 2024.
  2. Wolfe, J., et al. (2021). Evaluation of a Dual Adaptive Remote Microphone System. Journal of Educational, Pediatric & (Re)Habilitative Audiology, Vol. 25. 2021-2027.
  3. Thibodeau, L. (2020). Benefits in Speech Recognition in Noise with Remote Wireless Microphones in Group Settings. Journal of the American Academy of Audiology, 31(6), 404-411.
  4. Thompson, E., et al. (2020). Remote Microphone System Use in the Homes of Children with Hearing Loss: Impact on Caregiver Communication and Child Vocalizations. Journal of Speech, Language, and Hearing Research, 63(2), 633-642.
  5. Timmer, B. H. B., Bennett, R. J., Montano, J., Hickson, L., Weinstein, B., Wild, J., Ferguson, M., Holman, J. A., LeBeau, V., & Dyre, L. (in press). Social-emotional well-being and adult hearing loss: Clinical recommendations. International Journal of Audiology. https://doi.org/10.1080/14992027.2023.2190864

著者:Tania Rodrigues (オーディオロジスト)

Taniaは南アフリカのケープタウン大学でオーディオロジストの資格を取得し、2013年にフォナックに入社しました。それ以前はイギリスの公共部門と民間部門の両方で働き、臨床現場でさまざまな経験を積んでいます。

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