AIによる機械学習で進化した自動環境適応プログラム【ルミティまとめ①】
昨日発売された、小児専用補聴器「フォナック スカイ L-M」および「フォナック スカイ L-SP」、そしてパワータイプ補聴器「フォナック ナイーダ L-SP」。3 製品には、他のルミティシリーズ製品同様にフォナック独自の自動環境適応プログラムが搭載されています。
- 全ルミティ シリーズ補聴器(スカイ ルミティを除く)に搭載:オートセンス OS 5.0
- 小児専用補聴器シリーズ「スカイ ルミティ」に搭載:オートセンス スカイ OS 5.0
ルミティはもちろんのこと、歴代のフォナック補聴器に搭載されてきたテクノロジーの大黒柱とも言えるオートセンス OS/オートセンス スカイ OS。その概要と、「5.0」による進化ついてご紹介します。
1. オートセンス OS
オートセンス OS は、何千もの実世界の録音を元に、AIによる機械学習で聞こえの環境に合わせて自動適応する、フォナック最新のオペレーティングシステムです。周囲の音環境を毎秒 700 回スキャン分析し、200 通り以上の組み合わせからその場に最適な音を選びます。最適な音は音環境ごとに切り替えられるのではなく滑らかにブレンドされるので、音がごくスムーズに変化します。
2. スカイ専用の自動環境適応プログラム – オートセンス スカイ OS
研究によると、難聴児は健聴児と比べて疲れやすく、その原因は騒がしい環境の中で経験する聞こえの困難さに起因しています*1。例えば小学生は、騒がしい環境で話を聞くことに 1 日のほぼ 90% を費やしていると言われている*2ため、子どもにとって騒音下における快適な聞こえはとても大切です。
そこで開発されたのが、フォナック独自の子ども専用自動環境適応プログラム「オートセンス スカイ OS」。子ども特有の聞こえの環境を分析し、その環境に適応できるように設計された機能です。
スカイシリーズの補聴器に搭載されているこの機能では、聞こえの環境を毎秒 700 回スキャン分析し、200 通り以上の組み合わせから子ども特有の音環境を反映させています。こどもが過ごす環境の生音源を元に、AIによる機械学習で聞こえの環境に合わせて自動適応するので、子どもが日々過ごす様々な環境における「ことば」と「騒音」を的確に分類し、適切なレベルの雑音抑制を提供します。
研究によると、オートセンス スカイ OS によって教室などの騒がしい環境を正しく分類する精度が 30% 向上し、叫び声や怒鳴り声を不要な騒音として認識する正確性が 39% 向上することも分かっています*3。
オートセンス OS も オートセンス スカイ OS も、ルミティシリーズで第 5 世代に進化
両プログラムは、AIによる機械学習を繰り返し進化を続けてきました。フォナック最新となるルミティ シリーズの補聴器には、プログラムの5代目となるオートセンス OS 5.0 /オートセンス スカイ OS 5.0 が採用されています。
今回の新製品にも搭載されている「5.0」では、従来のオートセンス OS /オートセンス スカイ OS に比べ、より良い聞こえと使いやすさをご提供できるよう様々な機能が進化しています。次の機能は、5.0 への進化によりパワーアップした機能の代表例です。
● ウインドブロック
風切り音を検知した際に、低周波数帯域を減衰して効果的に抑制する「ウインドブロック」機能。従来は利用可能クラスが限定的でしたが、ルミティでは 30 から 90 までの全クラスに搭載されています。屋外で過ごすことが多い子どもにとって利便性が高くなっています。
● ダイナミックノイズキャンセル
側方や後方からの騒音を抑えることで正面で話している人の声を自動的に聞き取りやすくする「ダイナミックノイズキャンセル」機能。前プラットフォームの「パラダイス」では 90 クラスのみで利用可能でしたが、ルミティでは 90 クラスだけではなく 70 クラスにも搭載されています。
● 非常に騒がしい中でのことば
自動的に聞き取る幅を狭めて正面の人の声にフォーカスし会話を聞き取りやすくする、「非常に騒がしい中でのことば」プログラム。ルミティでは従来より低い設定でもこの機能が有効化されるので、より良いことばの理解をサポートします。
※「ダイナミックノイズキャンセル」等の新機能は、ルミティ補聴器の中核を担う「スマートスピーチ テクノロジー」により機能しています。スマートスピーチ テクノロジーについては次回の【ルミティまとめ②】でご紹介します。
【オートセンスに関する他ブログ記事】
24年にわたる開発: フォナックにおけるAIの進化【オーディオロジーブログ】 | きこえのブログ by フォナック (kikoeblog.jp)
【参考】
ことばの理解度を高める機能が充実【ルミティまとめ②】 | きこえのブログ by フォナック (kikoeblog.jp)
使い勝手抜群の Bluetooth®接続【ルミティまとめ③】 | きこえのブログ by フォナック (kikoeblog.jp)
新製品掲載 – フォナック補聴器の新カタログ 2024年5月版 | きこえのブログ by フォナック (kikoeblog.jp)
● スカイ ルミティ製品情報(フォナック補聴器公式サイト)
● ナイーダ ルミティ製品情報(フォナック補聴器公式サイト)
出典/参考資料:
*1 Hornsby, B. W. Y., Gustafson, S. J., Lancaster, H., Cho, S. J., Camarata, S., & Bess, F. H. (2017). Subjective fatigue in children with hearing loss assessed using self- and parent-proxy report. American Journal of Audiology, 26(S), 393–407.
*2 Cruckley, J., Scollie, S., & Parsa, V. (2011). An exploration of nonquiet listening at school. Journal of Educational Audiology, 17, 23–35.
*3 Feilner, M., Rich, S., & Jones, C. (2016). Automatic and directional for kids – Scientific background and implementation of pediatric optimized automatic functions.
*4 Appleton, J. (2020) AutoSense OS 4.0 – significantly less listening effort and preferred for speech intelligibility. Phonak Field Study News retrieved from www.phonakpro.com/jp/ja/support/other-support/Evidence. 2022年10月にアクセス。
*5 Latzel, M. & Hobi, S. (2022) Receiver with mechanical vent provides benefit of open and closed acoustics for better speech understanding in noise and naturalness of own voice perception. 2022年8月にアクセス。
*6 Thibodeau L. M. (2020) Benefits in Speech Recognition in Noise with Remote Wireless Microphones in Group Settings. Journal of the American Academy of Audiology, 31(6), 404–411.