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ロジャーのはなし  – パート1【オーディオロジーブログ】

オージオロジストのMin Rohが、ロジャーテクノロジーの「何?」「なぜ?」「どこで?」について、その機能、利点、臨床的な応用について説明します。

ロジャーに詳しくない、またはその説明が難しいと感じている聴覚専門家の皆さまのための新シリーズ、「ロジャーのはなし」。このシリーズは、補聴器だけでは提供できないロジャーの利点についてのお客様へご説明するときのサポート資料としてご活用いただけるはずです。今回の記事では、「何」「なぜ」「どこで」について説明します。

ロジャーとは「何?」

基本的にロジャーとは、リモートマイクシステムで、その目的はマイクを音の信号に近づけることで、距離による影響を克服することです。

どんなマイクでも距離を克服する手助けはできますが、騒音が大きくなると、より高度な信号処理が必要になります。ロジャーなら、指向性マイクロホンを使用して音声に集中し、また環境騒音を推定して自動的にゲインを調整する自動音量調節することが可能です。

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つまりロジャーは、騒音や距離の影響が大きい聞こえの環境を克服するために設計されたマイクシステムであると言えます。

ロジャーテクノロジーは第三者の障害を軽減するのに役立ちます。家族や周囲の人々は、ロジャーなどのワイヤレスマイクシステムのおかげで、コミュニケーション時の不満や声を荒げる必要が少なくなり、生活の質、個人間のコミュニケーション、家庭の状況が改善されることが報告されています1

補聴器だけでなくロジャーを「なぜ?」えらぶのか

補聴器使用者の約3分の1が、いまだに騒音の中での会話に苦労しているという事実をご存知ですか2?補聴器はさまざまな聞こえの環境で多くの利益をもたらすことができますが、現在の補聴器技術の限界も認識する必要があります。

補聴器は、会話などの信号が近くにある場合に最大の利益を提供するよう設計されています。非常に遠くの音を拾うためにマイクの感度をより高くすることはできますが、補聴器が常に10メートル先の会話を拾うように感度を高くしすぎることは望ましくありません。そのため、補聴器は「近く」の範囲内で聴くことが意図されており、この範囲を超える音を除外します。

聞こえの環境に騒音があると、補聴器は高度な技術と騒音抑制機能を使用して信号対雑音比(SNR)を向上させます。しかし、出力音の品質は入力音の品質に依存します。ノイズのある音信号は、品質の低い出力をもたらします。そのため、これらの技術は近い距離で最も効果的であり、音信号が遠くに移動するにつれてその効果は減少します。

一方、ロジャーでは、マイクが信号源に物理的に近いため、より良い生のオーディオデータを取り込み、より良いオーディオ処理とよりクリーンな信号を提供できます。これは現在の補聴器のデジタル信号処理が行う以上のものです。また、ロジャーの自動音量調整により、信号は常にノイズよりも上に保たれます。

重要なのは、ロジャーが補聴器の使用を置き換えるものではなく、遠い距離や非常に騒々しい状況での使用を拡張し追加するものであるということです。

証拠は明確です。ロジャーは機能します!補聴器業界で科学的に最も検証されたマイクの一つであり、長く使用できる素晴らしい利点を誇っています:

グループでの会話において、補聴器単体と比較して最大61%のことばの理解の改善3

ロジャーを使用することで、健聴者と比べて騒音や距離を含む状況でのことばの理解が62%向上することが報告4

ロジャーを使用することで、補聴器単体と比較して、背景騒音の中でのことばの理解度が27%から81%に向上5

ロジャーは、補聴器単体と比較して、大きな背景騒音の中でのことばの理解度のスコアを最大65%改善6

※ロジャーシステムは、送信機(マイクロホン)と、対応する補聴器装置に関連付けられた受信機から構成されています。

ロジャーを「どこで?」使うのか

ロジャーは、さまざまなマイクモードのおかげで、多くのシーンで使用できます。これらのモードのほとんどは自動的に切り替わります。

次回は、ロジャーの「誰が」「いつ」「どのように」について話しましょう。お楽しみに!


この記事は、2024年6月25日にPhonak Audiology Blogに掲載された記事を翻訳したものです。

参考文献
  1. Scarinci N, Nickbakht M, Timmer B., Ekberg K, Cheng B and Hickson L. (2022). A qualitative investigation of clients, significant others, and clinicians’ experiences of using wireless microphone systems to manage hearing impairment. Audiology Research, 12 (6), 596-619. doi: 10.3390/audiolres12060059
  2. Picou EM. (2020). MarkeTrak 10 (MT10) Survey Results Demonstrate High Satisfaction with and Benefits from Hearing Aids. Seminars in Hearing, 41(01), 021– 036.
  3. Thibodeau LM. (2020). Benefits in Speech Recognition in Noise with Remote Wireless Microphones in Group Settings. Journal of the American Academy of Audiology, 31(6), 404–411. https://doi.org/10.3766/jaaa.19060.
  4. Thibodeau L. (2014). Comparison of speech recognition with adaptive digital and FM wireless technology by listeners who use hearing aids. American Journal of Audiology, 23(2), 201-210
  5. Lejon A, & Smith C. (2020). Speech improvement using Roger NeckLoop with different brands of hearing aids. Phonak Field Study News. Retrieved from www.phonak.com/evidence
  6. Zanin J, Vaisberg J, Swann S, & Rance G. (2024). Evaluating benefits of remote microphone technology for adults with hearing loss using behavioural and predictive metrics. International Journal of Audiology, 1–9. https://doi.org/10.1080/14992027.2024.2354500

著者:Min Roh(フォナック本社 ロジャー オーディオロジーマネージャー)

2017年にニュージーランドのオークランド大学で聴覚学修士号を取得。フォナックNZのセールス&オーディオロジーチームを経て、成人および小児の聴覚学、大学教育、専門団体でさまざまな役職を歴任した後、2024年にフォナック本社にロジャーオーディオロジストとして加わりました。

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