「笑顔でうなずいた」から理解している?:ティーチバックが聴覚ケアにおいて重要な理由【専門家向け】
※本記事は、Phonak Audiology Blog に掲載された記事を翻訳したものです。
どんなに丁寧に説明しても、時には誤解が生じることがあります。ティーチバック(teach-back)は、すべてのお客様が本当に理解した状態でクリニックを後にできるようにするための助けとなります。
新しい補聴器の使い方を説明した際に、お客様はしっかりとうなずいていたのに、次回来店時にその説明を誤って理解していた、という経験はありませんか?
学生時代を思い出してみてください。校長室に呼ばれ、校長先生から先生に伝言を頼まれたものの、内容をいまひとつ理解できなかったとします。校長先生は自信満々で、急いでいる様子だったので、聞き返してバカにされたくはない。そんな気持ちから、恥ずかしくて、つい「はい」とうなずいてしまう。
この「わからないのにわかったふりをする」という不確かな瞬間は、クリニックにおける多くのお客様が経験していることです。お客様は私たちを専門家として接しています。そのため、もし理解できなかったとすれば自分のせいだと考えてしまい、不安を抱えつつも質問することをためらってしまいます。
●なぜこれはお客様の成果にとって重要なのか
理解することは、同意や従うことと同じではありません。
お客様が「はい」と答えたり礼儀正しくうなずいたりするのは、敬意や恥ずかしさの表れであるときもあり、理解を示しているとは限りません。聴覚ケアでは、補聴器の機能や設定、日々のお手入れが複雑な場合もあります。間違って理解してしまうことは挫折や装用不足、満足度の低下につながるのです。
研究によると、人は医療の受診時に説明された内容のうち一部しか記憶していないことが多いことが一貫して示されています¹。聴覚学の現場では、フィッティングの際にうなずいていたお客様が、後になって耳垢フィルターの交換方法や補聴器とスマートフォンのペアリング方法を忘れてしまう、ということが起こり得るのです。
●ティーチバックとは?
ティーチバックとは、お客様が本当に重要な情報を理解できたかどうか確認するための、シンプルですが非常に有効な方法です。説明した後、お客様に自分の言葉で内容を言い換えてもらいます。
例:「私の説明がうまく伝わっているか確認したいので、お家で補聴器をどのように掃除するか、見せていただけますか?」
この小さな工夫で関係性が変わります。理解の責任をお客様から取り除き、理解を確認する責任を専門家側に置き換えることができます。
ティーチバックのエビデンス

Talevski ら(2020)によるシステマティックレビューでは、ティーチバックが医療のさまざまな場面において、患者の知識、「自分ならできる」という自己効力感、およびケアプランの遵守を向上させることが明らかにされています²。
これは記憶の定着を促し、自己管理への自信を支えるもので、補聴器の成功にとって非常に重要です。お客様が学んだことを説明したり実演したりできるようになることは、理解を確認するだけでなく、記憶や自信の強化にもつながります。
●ティーチバックを実践に取り入れる
ティーチバックを取り入れるために、対応時間を延長する必要はありません。既存の流れに自然に組み込むことができます。
以下のような小さな工夫を試してみましょう:
● 新しい機能を実演した後、その機能をどのように使うかをお客様に実際に見せてもらう
● 「はい/いいえ」で答えられる質問を避け、「補聴器が動かなくなった時、どうしますか?」のようなオープンな質問にする
● 家族が日常的にサポートすることが多いため、説明の様子を見てもらったり、場合によっては一緒に参加してもらうように促す
こうしたやり取りを続けることで、信頼が深まり、お客様は自分のケアにより積極的に関われるようになります。
●情報を“理解”から“力”へ
ティーチバックの目的は、単なる正確性ではなく「お客様のエンパワーメント」です。
それはお客様にこう伝えることでもあります:
「あなたの理解は大切です。」
自分の聞こえの健康を管理できていると感じられるほど、お客様は補聴器を継続的に装用する可能性が高まり、より良い結果につながります。
人中心のケアは共感から始まり、共感は「わからない」という不安を理解することから始まります。ティーチバックを活用することで、笑顔でうなずきながらも内心は不安、という状態で誰もクリニックを後にしないようにできるのです。
| 改訂版の 「The updated BSA Guiding Principles for Person-Centred Care in Adult Hearing Rehabilitation」 には、さらなるアイデアが掲載されています。全文はこちらからご覧いただけます(英語) |
参考文献:
- Kessels, R. P. C. (2003). Patients’ memory for medical information. Journal of the Royal Society of Medicine, 96(5), 219–222. https://doi.org/10.1258/jrsm.96.5.219
- Talevski, J., Wong Shee, A., Rasmussen, B., Kemp, G., & Beauchamp, A. (2020). Teach-back: A systematic review of implementation and impacts. PLOS ONE, 15(4), e0231350. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0231350

