フォナック インフィニオ ウルトラ:さまざまな環境でリアルタイムに適応しより良い音質を実現【専門家向け】
フォナックのオートセンス OS 7.0は、前世代と⽐較して18倍の⾳環境データを⽤ いて学習されており、環境分類精度がさらに向上しました。これにより、インフィニオ ウルトラ補聴器は新たな音環境にもリアルタイムでより高度に適応できるようになっています。
私たちの日常の聞こえ環境は、常に変化しています。ユーザーはさまざまな音環境にさらされ、それぞれ異なる課題に応じた素早い適応が求められます。健聴者の脳はこうした変化へ自然に適応できますが、難聴者にとってはその変化についていくことが難しく、特に騒がしい環境では会話が疲労感や負担につながることがあります。
こうした場面で重要となるのが、補聴器に搭載されたAIによる音環境分類です。補聴器は、ことば、背景雑音、音楽などの環境をリアルタイムで認識し、自動的に設定を調整します。これにより、ことばの聞き取り向上、より自然な音質、聴取努力の軽減、そして手動でのプログラム切り替えの削減が可能になります。
ここでは、この技術がどのように機能するのか、なぜ重要なのか、そしてどのようにシームレスな聞こえを支えているのかを見ていきます。
なぜオートセンス OS 7.0が必要なのか? そしてどのように動作するのか?
オートセンスは、フォナック補聴器に搭載された自動環境適応機能です。周囲の音環境を常時分析し、最適な聞こえを提供するために適切なプログラムを瞬時に起動する、いわば補聴器の“頭脳”です。
ユーザーが静かな部屋から騒がしいレストラン、あるいはコンサート会場へ移動した場合でも、オートセンスは音環境を継続的に分析し、「騒音下でのことば」や「音楽」などのプログラムへ滑らかに切り替えます。この切り替えは、ユーザーが操作する必要はありません。
その結果、生活のさまざまな場面に自然に適応する聞こえ体験が実現します。
オートセンスでは、機械学習を活用し、以下の2つの重要なステップによって高い精度を実現しています。
● 音環境の分析と分類
周囲の音の大きさやリズムの変化、声の高さ、時間的な特徴を抽出し、大量の学習データと照合します。
● リアルタイム適応
「騒音下でのことば」や「音楽」などのプログラムを起動しながら、ノイズブロック、ステレオズーム2.0、全方位からの言葉の明瞭性 といった機能を聞こえ環境に応じて作動させます。これにより、ユーザーは手動調整を行うことなく、多様な音環境をスムーズに移行できます。
このシステムの中核には、高度な分類アルゴリズムがあります。これは実環境の複雑な音を学習しており、音の立ち上がり方や周波数特性、音の特徴や変化のパターン、SN比などの特徴を解析し、「ことば」「雑音」「音楽」といった異なる音環境を分類します。
この高精度な分類によって、困難な騒音環境でも、ことばの聞き取りと快適性を重視した適切なプログラム選択が可能になります。
なぜオートセンス OS 7.0では学習データを増やして再学習したのか?
オートセンス OS 7.0では、多様な話者、雑音、音楽ジャンルを含む新たな録音データを用いて再学習を行いました。学習データ量は従来の18倍に増加しており、これによって複雑な音環境の識別能力がさらに向上しています。
特に、以下の2つの難しい環境に重点が置かれました。
● 騒音下でのことば環境
「単なる騒音環境」なのか、それとも「騒音下でことばが存在する環境」なのかを正確に区別することが重要です。
単なる騒音環境では快適性の確保が優先されますが、「騒音下でのことば」ではSN比改善による聞き取り向上が重要になります。
● 音楽
音楽はジャンルによって大きく特徴が異なるため、分類が難しい環境です。再学習によって、オートセンス OSは音楽をより正確に識別し、自然な音質を保ちながら再生できるようになりました。
では、なぜすべての音を常に“完璧”に認識することを目指さないのでしょうか?
それは、現実世界の音環境が常に変化し続けているからです。アカペラの歌声が会話のように聞こえることもあれば、背景雑音が非常に穏やかで、あえて処理しない方が自然な場合もあります。
もしシステムが「完璧な分類」にこだわり、すべてを厳密に分類しようとすると、お気に入りの音楽の一部を不自然に抑制したり、本来気にならない環境音まで過剰に処理してしまう可能性があります。
そのため、オートセンスは「本当に重要なこと」に焦点を当てています。必要な場面では会話を明瞭にし、音楽は豊かに楽しめるようにし、それ以外の環境では快適な聞こえを提供します。つまり、研究室レベルの“完璧な数値”を追い求めるのではなく、実生活において本当に価値のある聞こえ体験を提供することを目的としているのです。
オートセンス OS 7.0の改善はどのように検証され、どのようなメリットをもたらしたのか?
1.ラボ環境でのA/B比較¹
騒音下でのことば環境、静かな環境、さまざまな音楽ジャンルを含むサンプル音源を用い、オートセンス6.0と7.0を搭載した機器で比較評価を行いました。
カテゴリごとの認識精度を評価する混同行列を用いた結果、オートセンス7.0は、音楽および騒音下でのことば環境の分類精度が、前世代と比較して24%向上していることが確認されました。
2.実生活環境でのデータログ検証¹
この改善が実生活でも有効であるかを確認するため、18名の参加者の日常使用データを解析しました。
参加者は片耳にオートセンス6.0、もう片耳に7.0を装用し、日常生活の中で合計6,600時間以上の環境データが収集されました。
その結果、オートセンス7.0では、「非常に騒がしい中での全方位からのことば」プログラムが、より高頻度かつ適切に起動していることが確認されました(図1)。また、その起動タイミングは、実際の生活環境における聞こえニーズとよく一致していました。
図1: 1日の4つの時間帯における、「非常に騒がしい中での全方位からのことば」プログラムの起動頻度を、オートセンス6.0と7.0で比較した結果。
3.ことばの聞き取りに関する臨床研究¹
フォナック聴覚研究センター (Phonak Audiology Research Center)では、17名の補聴器経験者を対象に、実環境に近い騒音条件を再現した検査を実施しました。
オートセンスが音環境を正しく分類した場合、
●ことばの聞き取りは有意に向上
●「非常に騒がしい中でのことば」では、平均8パーセントポイント向上
●「非常に騒がしい中での全方位からのことば」では、平均22パーセントポイント向上
という結果が得られました。
これらの結果は、環境分類精度の向上が、「騒音下での快適性」「非常に騒がしい中でのことば」「非常に騒がしい中での全方位からのことば」プログラムにおけるコミュニケーション性能向上へ直接つながることを示しています。

図2:17名の参加者における各条件でのことばの聞き取りスコア。
「騒音下でのことば」は平均58%(±15)、「非常に騒がしい中でのことば」は66%(±14)、「非常に騒がしい中での全方位からのことば」は80%(±11)を示した。
結論
複雑な音環境の中で生活するユーザーを支援する補聴器専門家にとって、オートセンス OS 7.0は大きな進歩をもたらしています。
騒音下でのより明瞭な会話、より豊かな音楽体験、そして快適性や自然さを損なわない聞こえを実現することで、ユーザーの日常生活をより支える技術となっています。
重要なのは、“完璧な数値”を追求することではありません。
ユーザーにとって本当に価値のある瞬間を届け、社会的・感情的なつながりを支えることこそが、この技術の本質なのです。
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