WHO認知症ガイドラインときこえの健康 ~2026年版をわかりやすく解説~
WHOは、難聴を認知症のリスクに関わる重要な要因の一つとして挙げています。ただし、「補聴器を使えば認知症を予防できる」という意味ではありません。大切なのは、きこえの問題を早めに見つけ、適切に支援することを、健康的に年齢を重ねるための取り組みの一つとして考えることです。

まず知っておきたいこと
健康に年齢を重ねるためにきこえを考える
寿命が延びるなか、認知面だけでなく、体の健康や人とのつながりを保ちながら年齢を重ねることが、ますます大切になっています。きこえの健康も、その重要な要素です。
WHOは2021年の『世界聴覚報告書』で、年齢を問わず、必要な人が聴覚ケアを受けられることの重要性を示しました。さらに2026年7月には、『認知機能低下および認知症のリスク低減に関するガイドライン』第2版を発表し、健康的な加齢を支えるうえで、きこえの健康が果たす役割を改めて示しました。
聴覚ケアは聞こえることの先を支える
これまで聴覚ケアでは、音を聞こえやすくし、ことばの理解を助けることが重視されてきました。これらは今も大切な目標ですが、聴覚ケアのゴールはそれだけではありません。
聞き取りが楽になると、会話に参加しやすくなり、家族や友人とのつながりを保ちやすくなります。外出や趣味などの活動を続ける自信にもつながります。つまり聴覚ケアは、コミュニケーションを通じて、心身の健康や生活の質を支える可能性があります。

フォナックの包括的な聴覚ケアの枠組み
また、良い結果を得るには、補聴器などの技術だけでなく、相談しやすい環境、専門家との信頼関係、周囲の理解、本人の気持ちへの支援も欠かせません。一人ひとりの生活や希望に合わせて支えることが大切です。
WHOのガイドラインが示していること
WHOのガイドラインでは、生涯を通じて改善できる可能性のある複数の要因に取り組むことで、認知症の発症を最大45%予防または遅らせられる可能性があるとしています。難聴も、その重要な要因の一つです。
WHOは、難聴を防ぐ取り組みに加え、早めに難聴を見つけ、適切に対応することを勧めています。ただし、ガイドラインは「補聴器が認知症を予防する」と断定しているわけではありません。聴覚ケアを、健康的に年齢を重ねるための幅広い取り組みの一部として位置づけています。
WHO 2026年版の主なポイント
日々の聴覚ケアで大切なこと
聴覚ケアでは、聴力検査の結果だけを見るのではなく、聞こえにくさが日常生活にどのような影響を与えているかを確認することが重要です。たとえば、家庭での会話、騒がしい場所での聞き取り、外出や地域活動への参加、聞き取りによる疲れなどについて話し合います。
こうした会話を通じて、その人にとっての「良くなった状態」が何かを具体的にできます。家族との会話を楽しめるようになる、好きな活動を再開する、自信を持って人と会えるようになる、一日の終わりの疲れが減るなど、目標は人によって異なります。
本人の希望を理解し、生活の中で実感できる変化を確かめることで、きこえだけでなく、その人らしい暮らしを支える聴覚ケアにつながります。
聴覚ケアに関わる人へのメッセージ
これからに向けて
WHOの最新ガイドラインは、聴覚ケアが、会話や人とのつながりを保ち、その人らしく生活するための支援であることを改めて示しています。また、認知機能低下や認知症のリスクを減らすことにも役立つ可能性があります。
研究は今後も進んでいきます。現時点で明確に言えるのは、きこえを支えることは、その人の生活全体を支えることにつながるということです。
【参考資料】
フォナック Audiology Blog 原文記事(英語)

