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難聴には聞こえ以外の問題も! ー NHKテキスト きょうの健康 PR連載企画

先月お届けした「NHKテキスト きょうの健康 PR連載企画」の第2回目をお届けします!

難聴は認知症や耳鳴りと関係している、という研究が進んでいます。
高齢化が進む現代では、加齢によって難聴になる人はますます増えていくと考えられます。耳鼻咽喉科の医師杉内智子先生に、難聴と認知症、耳鳴りとの関係について伺いました。

Q 難聴が認知症の危険因子の一つって本当ですか?

A 最近、難聴と認知症の関係をよく耳にするようになりました。たとえば、2017年7月に、国際アルツハイマー病会議が、「認知症の約%は高血圧や肥満など予防が可能な9つの要因によって起こる」と発表しました。この9つの要因のなかに難聴が入っていたのですが、それだけでなく「難聴は予防できる要因のなかで最も大きな危険因子」とも指摘されたのです。
近年の研究によリ、難聴によって脳に伝わる音の刺激や情報量が減った状態が長く続くと、感じたり考えたりすることが少なくなり、脳が徐々に萎縮したり機能が低下してしまうことがわかってきています。耳から入る音や言葉は、感情を動かしたり、行動を考えることにつながるなど、脳にとって大きな刺激となっているのです。
また、聞こえが悪くなると人と話すのがおっくうになり、話すのがつらくなって外出が減り、引きこもりがちになります。こうなると活力が低下してしまいます。このような負のサイクルが認知機能の低下につながるとも考えられています。
高齢になるとどうしても加齢性難聴の人が増えてきます。認知症のリスクを減らすには、早めに難聴に対応すべく、必要なら補聴器をつけて、脳の働きが衰えないよう社会とのつながりを保つことがとても大切です。

Q 一日中耳鳴りがします。もしかしたら難聴と関係がありますか?

A 耳鳴りとは、体外に音源がないにもかかわらず音を感じる状態です。
耳鳴りに悩む人の9割は難聴を伴っているといいます。なぜ耳鳴りと難聴が関係しているのか、はっきりはわかっていないのですが、通常、耳から入った音は「蝸牛」という場所で電気信号に変換されて脳へ伝わります。脳では音をきちんと認識するために、聞こうとしていない音(電気信号)をそぎ落として明瞭にしています。たとえば、周りに人がいる場所で会話をしている時、相手の声は聞こえるけれど、ほかの人の声はほとんど聞こえませんね。それは、そのように脳が対応しているのです。しかし、難聴によって電気信号が少なくなると、脳は足りなくなった電気信号を得ようと過剰に反応してしまいます。つまり、脳が一部興奮しすぎてしまうのです。そのため、普通であればそぎ落としてきた電気信号をより強くしようと働き、それが耳鳴りとして感じると考えられます。加齢に伴って現れる加齢性難聴では、高い音が聞き取りにくくなるため「キーン」という高い音の耳鳴りが多くなります。
耳鳴りの治療には薬物療法や心理療法などがありますが、難聴がある場合は補聴器を用いた音響療法が主流になっています。これは、補聴器を装着して、聞こえづらくなっている音域の情報量を増やす方法です。これによって脳の興奮を抑え、耳鳴りを改善させるのです。また、サウンドジェネレーターという数種類のノイズや生活環境音などを組み込んだ補聴器を使う方法もあります。
耳鳴りで悩んでいる人の多くは、難聴だと自覚していないこともあります。耳鳴りが気になったら、早めに耳鼻科を受診しましょう。

こんな耳鳴りには注意して
病気に伴う耳鳴りもあります。たとえば、突然片方の耳が聞こえなくなる突発性難聴、低い音だけが聞こえにくくなる急性低音障害型感音難聴、平衡感覚に異常が生じるメニエール病や聴神経腫瘍などさまざまな疾患があります。また、動脈瘤など血流の異常で脈打つような拍動性の耳鳴りが起こることもあります。
放置しておくと治療の効果が表れにくくなるケースもありますから、「耳鳴り程度など」と侮らず、おかしいと感じたらできるだけ早く耳鼻科を受診しましょう。

※「NHKテキスト『きょうの健康』PR掲載より」

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