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水や湿気から補聴器を守るための3箇条【オーディオロジーブログ】

水はどこにでもあり、補聴器を水分から守ることはとても重要です。今回は、ユーザーが自分の補聴器を水や湿気によるダメージから防ぐ方法についてのヒントを紹介します。

当たり前のことですが、水は生きとし生けるものにとって必要不可欠な存在です!

地球は大部分が水で覆われており、私たちの周りの空気中にも気体の状態で存在します。ヒトは体重のおよそ60%にあたる量の水分を保持し、その一部は体温調節のために汗として体外に排出されます

さらに、水と湿気はマリンレジャーやヨット、シーカヤックのほか、スポーツジムでの運動など、さまざまなレジャーにつきまといます。補聴器の内部に水分が侵入(図1-A)すると、断音や歪み、そして(特に高周波数の)出力低下が発生し、性能に悪影響を及ぼす可能性があります

そして長期間水や湿気に繰り返しさらされると、補聴器内部の精密かつ精細な電子部品が腐食による損傷(図1-C)を受け、修理やオーバーホールが必要になる場合があります。

図 1: 補聴器内部のマイクとプログラムボタンの周囲に侵入した水分(Aに対しBは新品の状態)。水分の蓄積や長時間の暴露は電子部品の腐食を引き起こす。腐食が充電接点の周りに発生した状態(Cに対しDは新品の状態)。

Chaluperらによる「水分によるダメージは、補聴器の故障原因の代表的なもの4」という見解のとおり、私たちの修理部門で見られる保証外修理の原因の大部分も耳あか、ほこりの堆積、そして水分です。

この永遠の課題に対し、水や湿気による補聴器へのダメージを防ぐための手段や製品が数多く開発されるようになりました。

1. これまでの考え方 – “君子危うきに近寄らず”

このよく知られたことわざのとおり、そもそも水に曝されるような場所で補聴器を使わないよう心がけることは、「できるだけ水のかかる場所や環境で補聴器を使用しないでください」というこれまでのアドバイスの基礎となっています。ただし、そうは言ってもうっかり補聴器をつけたままシャワーを浴びてしまうこともあるでしょうし、日本のように高温多湿な気候で暮らしているとどうしようもありません。

また、日々言語発達と学習のために補聴器を使っている小さな子どもたちにとっては、そんなことはお構いなしです。大人にとっても、雨が降っている中で往来を歩くこともあるでしょうし、アクアビクスやプールサイドといった水のかかる場所でも聞き取りを保ち周りの音に注意を払うことは欠かせません。

難聴者を対象とした最近の調査では、補聴器装用者の 52% が水辺での行動で補聴器を使用することに不安を感じており、補聴器をまだ購入していない人に至っては約 68% と、さらに増加することがわかっています5

では、水や湿気の多い場所で補聴器を使うために、現在どのような解決方法があるのでしょうか?

2. 乾燥させる

一般的に湿気による補聴器のダメージを防ぐ方法として知られているのは、就寝前に補聴器を乾燥ケース等に入れておくことでしょう。現在ではさまざまなツールが提供されていますが、シンプルなものとしては、補聴器を乾燥剤の入ったケースに密閉するもの(図2-A)があります。一晩ケースに閉じ込めておくことで、乾燥剤によって補聴器の湿気を取り除くことができます。

ファンを回すことによって強制的に空気を循環させたり、熱によって乾燥を促したりするタイプのアクセサリーと比較して、乾燥ケースは効果が低い傾向があります。これらの乾燥機能付きアクセサリーの中には、耳の炎症を引き起こす恐れのある菌の増殖を防ぐために紫外線照射機能を搭載したものもあります。

(A)
(B)

図2:

A – 乾燥ケースと詰め替え用シリカゲル。

B – チャージ アンド ケア。乾燥機能付きアクセサリーの一例で、ケース内の空気を循環させて補聴器を乾燥させるファンと除菌のためのUV照射器を備える3

これらのアクセサリーは本当に効果があるでしょうか?

乾燥機能付きアクセサリーを使用しているユーザーのメリットを調査した4年間の研究によると、温風乾燥式の補聴器乾燥機を使用したユーザーは約27.2か月に1回の割合で修理が発生したのに対し、使用しなかったユーザーでは約9.7か月に一回の割合で修理が発生したとの報告があります3

より最近の研究2では、真空乾燥機能についての調査も行われました。湿度センサーを用いて、補聴器から湿気が十分に除去されたかどうかを判断するテストも行いました。湿気に曝された補聴器を真空乾燥機能にかけた結果、約77%に機能改善がみられたことが示されました。

3. 防御を固める

別の考え方として、補聴器に水が入らないようにすることでダメージを防ぐことが挙げられます。例えば Ear Gear のような補聴器を上からカバーするアクセサリを用いることで、少々であれば水や湿気から補聴器を保護することができます。

アドバンスト・バイオニクスは、人工内耳用サウンドプロセッサ「ナイーダ CI」用にアクアケースを提供しています。ナイーダCIをアクアケースに入れ、アクアマイクヘッドピースと一緒に使用することで、水の中でも使用できます

そして、ユーザーがこれ以上水に対する不安を抱えながら補聴器を使用しなくても良いように…フォナックは先日、世界初*のウォータープルーフ**充電式補聴器「オーデオ ライフ」を発売しました。この新製品が提案する、補聴器の防水機能の新たなスタンダードをこちらのブログで紹介していますのでぜひご覧ください。

 

*2022年7月当社調べ

**補聴器は保証期間中、水深50cmまでの防水機能を担保します。レシーバの音口から水が入る可能性がありますので、この部分を水に浸さないようにしてください。各種の乾燥用ツールは、レシーバに残った水分を取り除くのに役立ちます。また性能を維持するため、レシーバに付着した耳あかやゴミを定期的に清掃することをおすすめします。補聴器のレシーバは車のタイヤのように消耗品であり、補聴器を使い続ける限り、定期的に交換が必要な部品です。

 


この記事は、2022年7月12日にPhonak Audiology Blogに掲載された記事を翻訳したものです。

参考文献:
  1. Medical News Today (2020) – What is the average percentage of water in the human body? Retrieved from https://www.medicalnewstoday.com/articles/what-percentage-of-the-human-body-is-water. Accessed June 28, 2022.
  2. Hay, M. E.& Zielinski, R. Q. (2022) Moisture in hearing instruments: Problematic, prevalent and professionally preventable. The Hearing Journal, March 2022, 20-24.
  3. Richards, D. & Martin, R. L. (2006) For healthier hearing aid and happier patients, use a warm-air drying system. The Hearing Journal, Vol. 59(2), 44.
  4. Chalupper J, Flores A 2011 Beneath the surface: Understanding the terms “water resistant” and “waterproof.” The Hearing Review, Vol. 18, 56-61.
  5. Taphuntsang, D. (2020). Market research ID 4398. Please contact marketinsight@phonak.com if you are interested in further information.
  6. Advanced Bionics AquaCase. Retrieved from https://www.advancedbionics.com/us/en/home/solutions/accessories/aquacase.html. Accessed June 28, 2022.

著者:David James Crowhen(Commercial and Operations Director, Sonova (Wholesale) New Zealand / Director of Audiology – Australia and New Zealand)

Davidはフォナックで10年以上働いています。音楽と人助けに関心を持っていた彼が、聴覚学の道に進んだのは自然なことでした。1999年に、ニュージーランド オークランド大学の聴覚学の修士課程を卒業しました。その後、10年間ニュージーランドと海外で臨床に携わりました。Davidは先進的な補聴器やワイヤレス通信技術、そしてそれらを顧客と家族のニーズに基づいて選択し、臨床現場においてこれらの機能の検証や評価をサポートすることに特別な関心を持っています。

 

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