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フォナック インフィニオ ウルトラ:あらゆる方向からの明瞭なことばを届ける

「全⽅位からのことばの明瞭性(以下、SSC)」 のリリースからわずか1年後に、フォナックはSSC 2.0を搭載したインフィニオ ウルトラを発売しました。AI駆動型補聴技術の新たな進化形であるインフィニオ ウルトラは、騒がしい環境下でもあらゆる方向からの明瞭なことばをお届けします。

静かな場所では会話は自然に流れます。ことばがはっきりと聞こえ、話すタイミングも分かりやすく、脳は必要な手がかりをすべて受け取れます。しかし、賑やかなカフェ、混雑した場所や駅など騒がしい環境において、会話についていくことは難聴者にとって日々の課題になり得ます。

フォナックはこれらの課題に正面から取り組んできました。騒がしい環境下でことばをより明瞭にするAI搭載の聴覚ソリューション「インフィニオ ウルトラ」および「SSC 2.0」により、新たな進化の節目を迎えました。

従来の指向性マイクロホンは1つの方向からの音に焦点を当てますが、SSCは周囲のあらゆる方向からの音を捉え、会話音と雑音が同じ方向から来る場合でも「ことば」と「雑音」を分離することができます。それと同時に、環境音を自然でバランスの取れた状態に保ちます。

なぜ聞き取りが難しくなるのか

科学的に見ると、その「聞き取りの難しさ」は、脳が周囲の雑音の中から一人の話し手の声をどのように分離するかに関係しています。静かな環境では、脳は周波数全体にわたる豊かな音の情報であるスペクトル手がかり、正確な時間情報である時間的手がかり、そして両耳からの入力による両耳情報を活用して、話し手の声を容易に追跡しています。

騒音環境では、2種類のマスキングが聞き取りを困難にします。エネルギーマスキングは、雑音が音声信号と物理的に重なってしまうことで生じるものであり、情報マスキングは、他者の話し声が注意を引きつけ、ワーキングメモリに過度な負荷をかけることで生じます。

難聴があると、耳のダイナミックレンジが低下し、さらに脳が雑音の中からことばを引き出すのに役立つ微細な時間情報や周波数情報へのアクセスが制限されるため、こうした処理はいっそう困難になります。

SSCで挑む、聞き取りの課題

私たちはこの課題にSSCを用いて取り組みました。SSCはディープ・ニューラル・ネットワーク(以下、 DNN)を基盤とした雑音除去技術で、背景雑音からことばを引き出し、それを強調して音声信号にスムーズに再統合します。

SSCは高度なAI駆動DNN処理と適応型指向性を組み合わせることで実現しました。さらに、インフィニオ ウルトラでは完全に再訓練されたDNNモデルを搭載したSSC 2.0を導入し、それにより雑音除去技術の処理効率が30%向上されました

その結果、実際の状況に応じて自動的に調整される聴覚体験が実現され、ユーザーは周囲の環境とのつながりを失うことなく、より明瞭なことばを、より少ない労力で聞き取ることができます。

SSC 2.0の特徴

  • 自動作動機能オートセンスOS 7.0に統合されたSSC 2.0は、ユーザーが騒がしい環境にいると判断した場合に自動で有効になり、手動での調整や追加の操作が不要です。
  • 聴取努力と疲労の軽減SSC 2.0により聴取努力が最大35%軽減され2、ユーザーは、1日の終わりの疲労感が少ないと報告しています3
  • 処理効率の向上従来モデルと比較して、新しい仕組みにより雑音除去技術の処理効率が30%向上し、1日を通してユーザーに安定した恩恵を届けます。
  • DNN と指向性処理の組み合わせインフィニオ スフィアはSSC 2.0と高度な指向性機能の両方を処理できます。歩行時にはモーションセンサーヒアリングが空間認識を優先し、スピーチセンサーが話者の位置に応じて最適な指向性を自動的に選択します。これにより、追加の指向性マイクロホンとDNNを基盤とした雑音除去技術を通じた環境認識のパーソナライズされたブレンドが可能になります。

技術を支える長年の革新

これらの進歩は、フォナックの長年にわたる研究と技術開発の成果です。ハードウェアやチップの設計から、ソフトウェアの高度化に至るまで、システムのあらゆる層の最適化に取り組んできました。その目標は、補聴器という極めて小さな空間の中で、パワー効率と処理能力の完璧なバランスを実現することでした。

SSCは数百万の音声サンプルで学習されており、リアルタイムのDNN処理を補聴器内で直接可能にしました。つい最近まで、このレベルのオンボードAIは電力と速度の制限のため不可能と考えられていました。

専用AIチップを搭載した初の補聴器「インフィニオ スフィア」の発売は、フォナックと聴覚業界全体にとって画期的な瞬間でした。それを基盤としてさらに進化した「SSC 2.0」は、ことばの抽出と環境認識を新たな次元に引き上げ、実際の聞き取り環境におけるニーズにより寄り添った性能を実現しています。

SSC 2.0 により、賑やかなカフェ、混雑した場所、喧騒の駅など騒がしい環境においても、自然な会話が可能になります。

「全⽅位からのことばの明瞭性」についてのフォナック インサイトはこちら
※この記事は、2025年10月29日にPhonak Audiology Blogに掲載された記事を翻訳したものです。

参考文献

  1. Based on internal Sonova data. Please contact claims@sonova.com for more information.
  2. Tian, E., et al. (2025). Spheric Speech Clarity significantly improves speech understanding in a multi-talker scenario and reduces spatial listening effort with Mandarin speakers. Phonak Field Study News. Retrieved from https://www.phonak.com/evidence
  3. Latzel, M., et al. (2025). Spheric Speech Clarity improves speech understanding and reduces both listening effort and fatigue. Phonak Field Study News. Retrieved from https://www.phonak.com/evidence

著者:Michael Preuss (スイス本社 オーディオロジーマネージャー)

Michaelは2022年に聴覚学マネージャーとしてスイス本社へ⼊社。リューベック聴覚⾳響アカデミーでの講師経験と⾃⾝の難聴体験を活かし、製品開発における聴覚学的知⾒の提供や専⾨家向けの詳細なトレーニングセッションを実施しています。ドイツ・リューベック応⽤科学⼤学にて聴覚⾳響学の学⼠号を取得しました。


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